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2007年6月23日 (土)

「女帝<エンペラー>」 傾国の美女、権力欲の烈女、そして愛を求める普通の女

シェイクスピア作の悲劇「ハムレット」をベースにしている映画です。
「ハムレット」は読んだことありませんが・・・。
僕が観に行ったのは、アジアの宝石チャン・ツィイーを観たかったから、それだけでした。
けれども、観始めてみるとかなり物語にも引き込まれてしまいました。

物語の初っ端から隠遁している皇太子ウールアンの仮面舞踏が見せられます。
この仮面をつけた演技というのが、この映画全体を釣らなく要素になります。
宮廷では、自分の発言が即自らの命、一族郎党の命をとられてしまうようなことに繋がりかねません。
人々は自分の思いとは別に、自分自身に仮面をかぶせ、宮廷でなすべき役割を淡々とこなしていきます。
それは下々のものだけではなく、王妃であっても、王であっても心に仮面をかぶらなくてはいけないのです。
王妃ワンは、先帝を毒殺した弟皇帝リーに復讐を計りたいとしています。
そしてそれには幼ななじみであった皇太子ウールアンへの想い、そして彼女自身への権力への欲望も絡んでいます。
しかしワンは現皇帝を知るにつけ、彼の自分への愛情が本物であることもわかってきて、心は揺らぎます。
またウールアンの許嫁であり、宰相の娘でもあるチンニーには、従女としての愛情を持ちつつも、彼女の純粋なウールアンへの愛情を感じ嫉妬も感じます。
このように心の中で渦巻く野望や感情を、仮面で覆い隠し王妃ワンは暮らしています。
それは他の登場人物についても同じでしょう。
皇太子はワンを愛しておりながら、義理の母子であるという儒教的価値観に悩み、また自分が辛い時になぐさめてくれたチンニーにも愛情を持ちます。
彼は新皇帝に対しては、父親への復讐というのももちろんですが、もう一つは自分が愛する女性を手に入れた男への嫉妬も少なからずあったでしょう。
新皇帝ですら、国を良くするために先帝を廃し、その先帝の持ち物であった王妃を手に入れたのは、完全に頂点に立ったと認識したかったのでしょう。
けれども彼は王妃ワンの美しさに魅かれ、心底愛するようになってしまう。

人の心というのは、自分自身でもこれこれこうだときっちりとわけられないものです。
「なんでこんなこと言っちゃったんだろ」とか「こんなつもりじゃなかったのに」ということは多々あります。
それだけわからないのが、人の心。
その複雑な人の心が、何かの拍子で何人かの心がクロスオーバーする。
そこに悲劇が生まれる・・・。
シェイクスピアの題材を上手に中国宮廷でアレンジして描いていたと思います。
やや長いという感もありましたが、最後まで人々が本心を見せない様子はずっと緊張感が途切れず、飽きることはありませんでした。

さて最後にお目当てでありましたチャン・ツィイーは。
相変わらずお美しいお顔です・・・。
今回はあまり笑顔を見せる役ではなかったですが、怒りの顔、恐い顔もやっぱり美しく・・・。
あの顔で一度怒られてみたいです(バカ)。
普通の人と肌が別のものでできているかのようにきめ細かい。
見目が美しいだけでなく、アクションでの体の動かせ方、立ち居振る舞いの所作など動きも美しく、観ていて惚れ惚れしてしまいます。

王妃ワンは、確かに傾国の美女であり、権力欲の強い烈女でもありました。
けれどもそれに加え、愛する人に愛されることを望む普通の女でもありました。

チャン・ツィイー出演「LOVERS」の記事はこちら→

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コメント

hyoutan2005さん、こんばんは!

セットの後まで作り込まれている様や、俳優さんたちの所作など、様式美を感じました。
このあたりの感じの美しさはアジアならではですよね。

投稿: はらやん(管理人) | 2007年7月 7日 (土) 19時43分

こんばんは。
複雑に悲しく絡み合う背合わせの愛と憎悪が、美しい映像で描かれていました。
こういう映画を観ると、アジアの映画は緻密でいいな、と思ってしまいます。

投稿: hyoutan2005 | 2007年7月 5日 (木) 18時53分

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