「女帝<エンペラー>」 傾国の美女、権力欲の烈女、そして愛を求める普通の女
シェイクスピア作の悲劇「ハムレット」をベースにしている映画です。
「ハムレット」は読んだことありませんが・・・。
僕が観に行ったのは、アジアの宝石チャン・ツィイーを観たかったから、それだけでした。
けれども、観始めてみるとかなり物語にも引き込まれてしまいました。
物語の初っ端から隠遁している皇太子ウールアンの仮面舞踏が見せられます。
この仮面をつけた演技というのが、この映画全体を釣らなく要素になります。
宮廷では、自分の発言が即自らの命、一族郎党の命をとられてしまうようなことに繋がりかねません。
人々は自分の思いとは別に、自分自身に仮面をかぶせ、宮廷でなすべき役割を淡々とこなしていきます。
それは下々のものだけではなく、王妃であっても、王であっても心に仮面をかぶらなくてはいけないのです。
王妃ワンは、先帝を毒殺した弟皇帝リーに復讐を計りたいとしています。
そしてそれには幼ななじみであった皇太子ウールアンへの想い、そして彼女自身への権力への欲望も絡んでいます。
しかしワンは現皇帝を知るにつけ、彼の自分への愛情が本物であることもわかってきて、心は揺らぎます。
またウールアンの許嫁であり、宰相の娘でもあるチンニーには、従女としての愛情を持ちつつも、彼女の純粋なウールアンへの愛情を感じ嫉妬も感じます。
このように心の中で渦巻く野望や感情を、仮面で覆い隠し王妃ワンは暮らしています。
それは他の登場人物についても同じでしょう。
皇太子はワンを愛しておりながら、義理の母子であるという儒教的価値観に悩み、また自分が辛い時になぐさめてくれたチンニーにも愛情を持ちます。
彼は新皇帝に対しては、父親への復讐というのももちろんですが、もう一つは自分が愛する女性を手に入れた男への嫉妬も少なからずあったでしょう。
新皇帝ですら、国を良くするために先帝を廃し、その先帝の持ち物であった王妃を手に入れたのは、完全に頂点に立ったと認識したかったのでしょう。
けれども彼は王妃ワンの美しさに魅かれ、心底愛するようになってしまう。
人の心というのは、自分自身でもこれこれこうだときっちりとわけられないものです。
「なんでこんなこと言っちゃったんだろ」とか「こんなつもりじゃなかったのに」ということは多々あります。
それだけわからないのが、人の心。
その複雑な人の心が、何かの拍子で何人かの心がクロスオーバーする。
そこに悲劇が生まれる・・・。
シェイクスピアの題材を上手に中国宮廷でアレンジして描いていたと思います。
やや長いという感もありましたが、最後まで人々が本心を見せない様子はずっと緊張感が途切れず、飽きることはありませんでした。
さて最後にお目当てでありましたチャン・ツィイーは。
相変わらずお美しいお顔です・・・。
今回はあまり笑顔を見せる役ではなかったですが、怒りの顔、恐い顔もやっぱり美しく・・・。
あの顔で一度怒られてみたいです(バカ)。
普通の人と肌が別のものでできているかのようにきめ細かい。
見目が美しいだけでなく、アクションでの体の動かせ方、立ち居振る舞いの所作など動きも美しく、観ていて惚れ惚れしてしまいます。
王妃ワンは、確かに傾国の美女であり、権力欲の強い烈女でもありました。
けれどもそれに加え、愛する人に愛されることを望む普通の女でもありました。
チャン・ツィイー出演「LOVERS」の記事はこちら→
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» 復讐の華が散る時 [CINECHANの映画感想]
148「女帝 エンペラー」(中国・香港)
時は中国五代十国時代。皇帝の弟リーが兄を殺害し、新帝に即位する。更にリーは皇太子であるウールアンをも抹殺しようとする。皇帝を殺された王妃ワンは、密かに想いを寄せていた義理の息子である皇太子を守るため、新帝リーとの結婚に同意する。
憎き男に抱かれながら、復讐を心に誓う王妃。彼女への欲望に溺れながら、皇太子暗殺を企てる新帝。権力を遠ざけ、芸術に生きようとしながら父の仇を討つと決意する皇太子。その皇太子への一途な愛を見せる大臣の娘チンニー。
...... [続きを読む]
受信: 2007年6月24日 (日) 00時43分
» 女帝[エンペラー] [★YUKAの気ままな有閑日記★]
チャン・ツィイー+戦乱の五代十国時代の宮廷+シェイクスピア悲劇『ハムレット』「観るべきか、観ざるべきか、それが問題だ」とか言っている場合ではない。ワクワクなのだ〜〜〜艶めかしい予感がするではないか【story】実の兄を殺して王位を奪い、甥にあたる皇太子ウールアン(ダニエル・ウー)をも抹殺しようとしていた新皇帝リー(グォ・ヨウ)。皇帝を殺された王妃ワン(チャン・ツィイー)は、密かに想いを寄せていた義理の息子である皇太子を守るため、リーとの結婚に同意する。憎き男に抱かれながら、復讐を胸に秘めたワンは―【... [続きを読む]
受信: 2007年6月24日 (日) 13時05分
» 「女帝 エンペラー」レビュー [映画レビュー トラックバックセンター]
「女帝 エンペラー」についてのレビューをトラックバックで募集しています。 *出演:チャン・ツィイー、ダニエル・ウー、グォ・ヨウ、ジョウ・シュン、他 *監督:フォン・シャオガン 感想・評価・批評 等、レビューを含む記事・ブログからのトラックバックをお待ちしています..... [続きを読む]
受信: 2007年6月24日 (日) 13時23分
» 映画 【女帝 [エンペラー] 】 [ミチの雑記帳]
映画館にて「女帝[エンペラー]」
中国の五代十国時代を舞台に、「ハムレット」をベースにした愛と復讐の宮廷ロマン。
実の兄を殺して王位を奪い、甥にあたる皇太子ウールアン(ダニエル・ウー)をも抹殺しようとしていた新皇帝リー(グォ・ヨウ)。皇帝を殺された王妃ワン(チャン・ツィイー)は、密かに想いを寄せていた義理の息子である皇太子を守るため、リーとの結婚に同意する。
「ハムレット」をベースにしているようだけど、そこまででもなかった気がする。
全体的に映像はとても美しく、ストーリーよりも映像重視なのかな... [続きを読む]
受信: 2007年6月24日 (日) 15時21分
» 女帝 エンペラー(映画館) [ひるめし。]
憎しみにくちづけ、愛に刺しちがえる。 [続きを読む]
受信: 2007年6月30日 (土) 13時42分
» 女帝 [エンペラー]/チャン・ツィイー [カノンな日々]
チャン・ツィイー主演作で映画公開にあたって彼女が来日キャンペーンしてたみたいだし、決してマイナー作品じゃないと思うんだけど、私がいつも行ってるシネコンで上映するにも関わらず何故か一度も劇場予告編を目にすることが出来ませんでした。予告をうってないという事は....... [続きを読む]
受信: 2007年6月30日 (土) 18時02分
» ▲ 『女帝 エンペラー』 [映画の感想文日記]
2006年。MediaAsia. THE BANQUET. YE YAN. 夜宴.
フォン・シャオガン監督・脚本。ユエン・ウーピン:アクション監督。
チャン・ツィイー... [続きを読む]
受信: 2007年6月30日 (土) 21時18分
» 女帝 エンペラー [パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ]
愛を奪われた女の復讐は、壮絶なほど、美しい__。女はひたすら待ち続けた。男に復讐を遂げる悦びの瞬間を・・・・。
古代中国の、五代十国時代。唐王朝が滅び、国と国とが絶え間なく争い、皇室内部でも実の父と子、兄と弟が殺しあっていた戦乱期。類稀なる美しさと聡明...... [続きを読む]
受信: 2007年6月30日 (土) 23時17分
» 女帝[エンペラー] [Diarydiary!]
《女帝[エンペラー]》 2006年 中国/香港映画 - 原題 - 夜宴 - 英 [続きを読む]
受信: 2007年6月30日 (土) 23時21分
» 【2007-77】女帝 [エンペラー](THE BANQUET) [ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!!]
人気ブログランキングの順位は?
王を殺された艶麗な王妃
兄を毒殺した王に即した皇帝
幕を開ける運命の戯曲
愛から毒があふれだす
もっとも残酷で──
美しい復讐が花開く
憎しみにくちづけ、愛に刺し違える
... [続きを読む]
受信: 2007年7月 1日 (日) 00時47分
» 女帝/エンペラー [Aのムビりまっ!!!(映画って最高☆)]
愛を奪われた女の復讐って、こんなに凄いものなの!?(゚Д゚≡゚д゚)エッ!?
評価:★5点(満点10点) 2006年 131min
監....... [続きを読む]
受信: 2007年7月 1日 (日) 01時43分
» 女帝 エンペラー [ネタバレ映画館]
ポロのルーツは馬球? [続きを読む]
受信: 2007年7月 1日 (日) 06時49分
» 女帝<エンペラー> [5125年映画の旅]
皇帝の弟・リーは、皇帝を毒殺して自らが皇位についた。王妃ワンは想いを寄せていた義理の息子である皇太子を守るためにとの結婚に同意する。しかしそれでもリーは皇太子の暗殺を諦めず、皇太子もまた、父の復讐のためにリーを狙う。そして王妃ワンもまた、自らの野望を巡...... [続きを読む]
受信: 2007年7月 1日 (日) 07時19分
» 女帝 [まてぃの徒然映画+雑記]
章子怡の映画!ということで観にいきました。唐朝後、五代十国時代の中国。呉越地方で舞踏にあけくれる皇太子ウールアン(呉彦祖)。一方、都では叔父が皇帝であるその兄(ウールアンの父)を殺し帝位を奪う。章子怡演じる皇后ワンは、自らの地位を守るために新帝の后となる。...... [続きを読む]
受信: 2007年7月 1日 (日) 09時44分
» 女帝 エンペラー [しまねこ日記]
唐王朝滅亡後の中国。
ある国で皇帝が弟によって暗殺される。弟は新しく皇帝の座に就き、皇太子ウールアン(ダニエル・ウー)をも抹殺しようとしていた。王妃ワン(チャン・ツーイー)は、密かに愛しているウールアンを守るため新皇帝との結婚を同意する。都から離れ...... [続きを読む]
受信: 2007年7月 1日 (日) 12時59分
» 女帝 エンペラー(中国/香港) [映画でココロの筋トレ]
チャン・ツィイーは好きな女優さん。(といいながら「SAYURI」は見逃したまま)
「女帝 エンペラー」を観ました!
( → 公式HP
)
出演:チャン・ツィイー、ダニエル・ウー、グォ・ヨウ、ジョウ・シュン
上映時間:131分
実の兄を殺して王位についた新... [続きを読む]
受信: 2007年7月 2日 (月) 11時45分
» 女帝 [エンペラー] [It's a Wonderful Life]
すごく絢爛優美な作品。
↑昨年秋香港行った際、泊ってたホテルの隣のビルに
入ってたシネコンで丁度上映されてたんですけど、
観ずじまいだった1本。
クレジット見るとキャストのチャン・ツィイー、ダニエル・ウーの他に
武術導演に袁和平(ユエン・ウーピン)...... [続きを読む]
受信: 2007年7月 2日 (月) 16時57分
» 女帝<エンペラー> [caramelの映画日記]
【鑑賞】試写会
【日本公開日】2007年6月2日
【製作年/製作国】2006/中国・香港
【監督】フォン・シャオガン
【出演】チャン・ツィイー/グォ・ヨウ/ダニエル・ウー/ジョウ・シュン
【原題】“THE BANQUET”
【原案】シェイクスピア「ハムレット」
古代中国...... [続きを読む]
受信: 2007年7月 2日 (月) 20時48分
» 女帝エンペラー [愛猫レオンとシネマな毎日]
この映画の原案になっているのは、シェイクスピアの「ハムレット」だそうです。
豪華絢爛な古代中国の宮廷を舞台に繰り広げられる復讐劇。
その中心の華になるのが、チャン・ツィイーです。
まあ、この映画は、チャン・ツィイーの為の映画といった印象でした。
想像は...... [続きを読む]
受信: 2007年7月 2日 (月) 21時04分
» 女帝(夜宴) [パフィンの生態]
2006年中国香港、フォン・シャオガン監督。ハムレットを基にした美しい
復讐劇という宣伝に誘われて行くと驚く!冒頭から最後まで人が死ぬ様子を
血しぶきとともに見せられ緊張して疲れた〜〜。バブル映画。
五代十国時代、皇帝であった兄を殺し新帝になったリー(グォ・ヨウ)は
王妃ワン(チャン・ツィイー)と結婚し、甥である皇太子(ダニエル・ウー)を
抹殺しようとしていた。皇太子を慕う娘(ジョウ・シェン)は復讐劇の巻き添えに・・。
なぜ豪華な俳優陣、美術(ティム・イップ)、音楽(タン・デゥン)にもかかわらず... [続きを読む]
受信: 2007年7月 3日 (火) 20時14分
» 女帝 エンペラー [ダイターンクラッシュ!!]
7月3日(火) 16:40~ 銀座テアトルシネマ
料金:1000円(Club-Cテアトル会員料金) パンフ:600円
『女帝 エンペラー』公式サイト
ハムレットが原案だそうだ。
ウィリアム・シェイクスピアなんぞ、「十二夜」を、何故か読んだことがあるのと、変態ロマン・ポランスキーの映画「ハムレット」を、何故か見ただけだ。クレアちゃんのジュリエットも見ていない、ましてやイーサン・ホークのハムレットなんぞ見ていない。だから、ハムレット読んでいないから、かの有名な台詞しか知らない。今回の劇中に出て... [続きを読む]
受信: 2007年7月 5日 (木) 03時37分
» 女帝<エンペラー> バラのおふろは15秒 [もっきぃの映画館でみよう]
タイトル:女帝<エンペラー>/中国・香港
ジャンル:中国歴史もの/2006年/131分
映画館:大阪なんば・敷島シネホップ(182席)
鑑賞日時:2007年6月2日(土),10:40〜 120人
私の満足度:75%
オススメ度:70%
大阪・三番街シネマに大きな看板。人ごみのなか
携帯のカメラでシャッターを切る。ジーッ。反対側から
歩いてきた若者の一人が、カメラの先に視線を向ける。
「ジョティやっ」
そう、チャン・ツィイーの最新作「女帝」いよいよ封切。
金曜日の朝、出張にでるときには新世界オー... [続きを読む]
受信: 2007年7月 5日 (木) 07時26分
» 憎しみも愛も仮面の下に〜女帝・エンペラー [ひょうたんからこまッ!]
『女帝 エンペラー』Ye yan / THE BANQUET(2006年・中国、香港/131分)公式サイト第31回香港国際映画祭「第1回アジアン・フィルム・アワード」最優秀美術指導賞その女の心を知る者はいない。愛を葬り葬られ、皇帝の妻の座に着いた時から、その心も美しい貌も氷の仮面の下に隠してしまったから。彼女の愛は何処にあるのか。それとも愛などと言う不確かなものは、もともとそこに存在しないのか。憎しみの中に愛が見える。愛の向こうに憎しみが見える。虚栄の座を変遷した傾城の美女が全ての愛を失い、愛以外の... [続きを読む]
受信: 2007年7月 5日 (木) 18時50分
» 映画「女帝 エンペラー」 [茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~]
原題:The Banquet/夜宴
チャン・ツィイー、章 子怡、Zhang Ziyi、何度でも、その名前を呼びたい、叫びたい気がする・・。今度はまた、その妖艶なる内に秘めたる彼女の魅力が輝く・・・
唐王朝滅亡後の五代十国時代、そのうちのひとつの国でも権力争いのさなかにあった。先... [続きを読む]
受信: 2007年7月 9日 (月) 01時31分
» 女帝 [エンペラー] (2006) 131分 [極私的映画論+α]
確かに綺麗だよね・・・でもね [続きを読む]
受信: 2007年12月16日 (日) 21時06分
» [映画] 女帝 [エンペラー] [日々の書付]
チャン・ツィイー主演の「女帝(エンペラー)」を観ました。
「ハムレット」古代中国の五代十国時代に置き換えた物語。
父である皇帝が叔父に殺され、先帝の皇后であるワンも手に入れようとする。
他国にいた皇太子にも叔父の暗殺の手がのびるが、からくも逃げ延びる。
皇太子を愛している皇后は、皇帝に身を捧げながら復讐の機会を待つ。
複雑にからみあう思惑と陰謀。皇帝、皇后、皇太子、家臣たちを巻き込みながら陰謀はやがて、血で血を洗う争いに発展。最後に残るのは…
チャン・ツィイー演じる皇后の感情が見... [続きを読む]
受信: 2011年7月 9日 (土) 06時39分
コメント
hyoutan2005さん、こんばんは!
セットの後まで作り込まれている様や、俳優さんたちの所作など、様式美を感じました。
このあたりの感じの美しさはアジアならではですよね。
投稿: はらやん(管理人) | 2007年7月 7日 (土) 19時43分
こんばんは。
複雑に悲しく絡み合う背合わせの愛と憎悪が、美しい映像で描かれていました。
こういう映画を観ると、アジアの映画は緻密でいいな、と思ってしまいます。
投稿: hyoutan2005 | 2007年7月 5日 (木) 18時53分