« 「イーオン・フラックス」 しなやかな美しさ | トップページ | 「恋は五・七・五!」 映画見て 自分で一句 詠んでみた »

2007年6月 5日 (火)

本 「レインツリーの国」

「図書館戦争」シリーズの有川浩さんの作品です。
「レインツリーの国」は先のシリーズの一作品「図書館内乱」の作品中に登場する小説です。
実際に有川さん自身がその劇中作品を小説にし、発表したものです。
「図書館内乱」では登場人物に図書館員とその幼なじみの中途失聴者の女性の恋が描かれていますが、劇中のキーアイテムである本作品「レインツリーの国」でも中途失聴者と健聴者の恋がテーマです。

映画「バベル」では人と人を阻む壁としての言語、違いを受け入れられない人間というものが描かれていました。
特に菊池凛子さん演じるチエコという役柄には痛いほどそれが描かれていました。
この作品に登場するひとみは中途失聴者です。
聾唖者であるチエコとはまた状況は違いますが、ひとみもやはり障害のため自身が周囲に対して壁を築き、警戒をして暮らしています。
彼女にとって唯一ネットが自分が障害を持つということを気にせず、言葉を操ることができる場所。
そうしたネットで知り合った伸行とひとみは互いに恋に落ちます。
その恋を成就するためにふたりが互いの違いを知り、それを尊重し、不器用ながらも近づいていく様がなにかじんときます。
伸行は素直に自分の言葉を口にする男性。
好きだと思ったら好きと言い、自分が悪いと思ったらごめんとあやまる。
なかなか素直にこうは言えません。
なんだか大人になって長い間生きていると、プライドが邪魔をするのか、素直にあやまったりすることができなくなりますよね。
「バベル」では人と人の間にある壁にやるせない思いになりましたが、この作品では何か希望を感じます。
かなり「青春」な言葉もでてくるので読んでいて恥ずかしくなるところもありますが、人を好きになってそれを素直に表現できることは恥ずかしいかもしれないけどとてもいいなと思います。
プライドとかも越えて恥ずかしくても「好き」だということ、そんな単純なことが壁を越えることができる方法だったりするのかもしれないと思いました。
有川浩さんの作品は、恥ずかしいくらいにまっとうで「青春」であるところが何か好きなんですよね。
心がまっさらになる気がします。

「レインツリーの国」 有川浩著 新潮社 ハードカバー ISBN978-4-10-301871-1

有川浩さん作品「図書館内乱」の記事はこちら→

映画「バベル」の記事はこちら→

|

« 「イーオン・フラックス」 しなやかな美しさ | トップページ | 「恋は五・七・五!」 映画見て 自分で一句 詠んでみた »

コメント

Agehaさん、こんにちは!

Agehaさんもぜったい「青春菌」持ってますよー。
僕はあまりライトノベル系は読まないんですけれど、確かに有川さんは普通の文芸小説とライトノベルの間くらいに位置づけられるような気がします。
ライトノベルから本格的に小説に入ってくるにはちょうどいい作家さんかもしれません。
先日有川さんの「阪急電車」を買ってきたので、近々に読むつもりです。
こちらも「青春菌」満載な気がします(笑)。

投稿: はらやん(管理人) | 2009年7月27日 (月) 15時04分

>恥ずかしいくらいにまっとうで「青春」であるところが何か好きなんですよね

上の、ミチさんのコメントとかぶりますけど
そこが好きなんだとしたら
ワタシも「青春菌」バリバリに持ってるのかもしれません。いまだに。(爆)

バイトを始める前は電撃文庫を代表とするような
ライトノベルばっか読んでたんで
本屋でバイトしてブログでブックレビューしろって言われても
文芸書やフツーの国内小説文庫は
なかなかはじめのうち手がでませんでした。
最近やっと少しずつその面白さが
わかってきたところです。
といっても有川さんや伊坂さんて
どちらかというとライトノベルからの橋渡しとして
比較的読みやすいタイプですよね?(笑)

投稿: Ageha | 2009年7月26日 (日) 14時21分

ミチさん、こんばんは!

この「青春」なところは有川浩さんの作品の持ち味ですよね。
でてくる男女がまた不器用で・・・。
なんか読んでいて高校生の頃の気分になっちゃうんですよね。

投稿: はらやん(管理人) | 2009年1月 7日 (水) 21時46分

こんばんは♪

>恥ずかしいくらいにまっとうで「青春」であるところが何か好きなんですよね
私も同じです!
かなり照れくさくなるんですけどね~。
ここまで照れくさいことを書ける人っていそうでいないのかもしれませんね。

投稿: ミチ | 2009年1月 5日 (月) 23時35分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 本 「レインツリーの国」:

» 読書:レインツリーの国(有川浩) [駒吉の日記]
レインツリーの国(有川浩) 「行けるとこまで行こうや」 『図書館内乱』の小牧と毬江の二人の関係を後押しし、劇中からスピンアウトした作品。小牧が毬江に薦めたってことですが、これって告白してるも同然じゃないの~!って内容でした。突発性難聴の毬江に小牧が「自分に... [続きを読む]

受信: 2007年10月29日 (月) 20時36分

» 『レインツリーの国』 有川 浩 〔著〕 [たいむのひとりごと]
『図書館内乱』の劇中にて登場した架空の本『レインツリーの国』が、そのまま有川浩(著)で現実化したのがこの本。スピンオフじゃないので、オリジナルな書籍扱いでもある。ただし設定も内容もすべて劇中で話されて... [続きを読む]

受信: 2008年6月10日 (火) 21時03分

» レインツリーの国 World of delight 有川浩 新潮社 [おいしい本箱Diary]
先日読んだ「図書館内乱」の中に、この物語が出てきてました。 クールな小牧さんと可憐な毬江ちゃんのエピソードです。 毬江ちゃんは、難聴者です。「突発性難聴」という病気のせいで 音が聞こえにくくなってしまった彼女を支え、愛していく小牧さんが 素敵で、とてもいい感じだったのですが、この「レインツリーの国」の ひとみと伸も、率直で真摯で、お互いをてさぐりしながら触れ合っていくその過程が くっきりと心に残る、いい物語でした。... [続きを読む]

受信: 2009年1月 4日 (日) 20時34分

» レインツリーの国 〔有川浩〕 [まったり読書日記]
レインツリーの国有川 浩新潮社 2006-09-28売り上げランキング : 7423おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools ≪内容≫ きっかけは「忘れられない本」そこから始まったメールの交換。 あなたを想う。 心が揺れる。 でも、会うことはできません。 ごめんなさい。...... [続きを読む]

受信: 2009年1月 5日 (月) 19時31分

» 本「レインツリーの国」 [<花>の本と映画の感想]
レインツリーの国 有川浩  新潮社 2006年9月 向坂伸行は、十年以上も前のライトノベルの本が忘れられず、他の人はどう思っているのかと感想が気になりネットで検索して、1つの感想を見つける。ブログ「レインツリーの国」... [続きを読む]

受信: 2009年1月 5日 (月) 22時37分

» レインツリーの国/有川 浩 [Book] [miyukichin’mu*me*mo*]
 有川 浩:著 『レインツリーの国』  レインツリーの国新潮社このアイテムの詳細を見る  先日読んだ 『図書館内乱』に、  この 『レインツリーの国』 が出てきました。  とても素敵な話だよって、  ある図書館員が女の子に勧めるんですよ。  これはもう、読むしかないじゃないですか!(笑)  で、読んでよかったー。  作中に登場した企画モノってことで、  あまり期待しないようにしてたんですが、  いい意味で裏切られました。  「フェアリーゲーム」というあるライトノベルに  かつてハマっていた、伸... [続きを読む]

受信: 2010年3月16日 (火) 20時13分

» 『レインツリーの国』 有川 浩 新潮社 [みかんのReading Diary♪]
レインツリーの国 きっかけは「忘れられない本」そこから始まったメールの交換。あなたを想う。心が揺れる。でも、会うことはできません。ごめんなさい。かたくなに会うのを拒む彼女には、ある理由があった―。青春恋愛小説に、新スタンダード。 「図書館内乱」に出てくる『レインツリーの国』という架空の本だったのを、実際に書き起こしたのがこの本らしい。 中学の時に読んだ『フェアリーゲーム』という本が忘れられず、社会人となった今、もう一度手に入れ読む向坂だったが、ネット上に自分と同じような感想を... [続きを読む]

受信: 2010年3月19日 (金) 00時24分

» レインツリーの国(有川浩) [Bookworm]
私ってホントに涙もろいんだなぁ・・・。いつにもまして号泣。最近、読書中に泣いてばっかりでなんだか厭なんだけど。涙腺が緩すぎるのか、読む本が泣きのツボにハマリすぎるのか、どっちなんだろう。・・・どっちもなんだろうなぁ、たぶん。... [続きを読む]

受信: 2010年10月17日 (日) 07時58分

» レインツリーの国 / 有川浩 [ねこやま]
抜粋 きっかけは「忘れられない本」そこから始まったメールの交換。 あなたを想う。心が揺れる。 でも、会うことはできません。ごめんなさい。 かたくなに会うのを拒む彼女には、ある理由があった―。 青春恋愛小説に、新スタンダード。 メディアワークス刊「図書...... [続きを読む]

受信: 2011年5月 2日 (月) 22時25分

« 「イーオン・フラックス」 しなやかな美しさ | トップページ | 「恋は五・七・五!」 映画見て 自分で一句 詠んでみた »