「エターナル・サンシャイン」 消しようのない記憶の輝き
「恋愛睡眠のすすめ」のミシェル・ゴンドリーの出世作です。
本作については評判が良かったのは知っていたのですが、ずっと未見でいました。
先日会社の後輩と映画の話になった時、とてもこの作品を評価していたので、DVDで観賞しました。
「恋愛睡眠のすすめ」を観たとき、独特の世界観のある監督だなと思いましたが、その世界にあまりハマれなかったので、ちょっとこの作品に対しても不安感はありました。
けれども観てみると、この作品に関してはハマれました。
「恋愛睡眠のすすめ」では夢と現実、本作では記憶と現実の境目を飛び越え行き来する感じは共通している感じがしました。
記憶の中の世界がリアリティがあるけれど非現実という感じの表現がなかなか面白かったです。
「恋愛睡眠のすすめ」の世界は夢というよりファンタジーでしたが、本作の方が日頃みるような夢のよう。
いつの間にか場面が転換しているところや、自分を客観的に見ている自分がいるなんてところは、夢でもよくありますよね。
そのせいか本作の方がわかりやすくて、登場人物への感情移入もしやすかったかもしれません。
生活することに消極的で、人に対してとてもシャイなのは、本作のジョエル(ジム・キャリー)も「恋愛睡眠のすすめ」のステファンも似ていましたね。
監督もたぶんそんな人なんでしょう。
「大人ときたら、悲しみと不安だらけ」
クレメンタイン、そしてジョエルがお互いに相手の記憶を消そうと訪れるラクーナ社の受付のメアリーの言葉です。
メアリーは生きていくのに不安になるような記憶は消してしまった方がいいと思っています。
人生しばらく生きていると、忘れてしまいような記憶の一つや二つはありますよね。
特に好きな人を失ったことなど。
好きだったのに、結果的にはなんだか知らないけれど喧嘩別れしてしまったこと・・・。
思い出すと辛いので、いっそのことそんな記憶は脳みそのハードディスクから消し去ってしまいたいと思うことは誰でもあるんではないでしょうか。
けれども辛い記憶っていうものは輝いていたときの記憶とセットになっていることが多いですよね。
原題は「ETERNAL SUNSHINE OF THE SPOTLESS MIND」。
”SPOTLESS MIND”は汚れていない記憶(心)という意味でしょうか。
原題を直訳すると「汚れていない記憶の永遠の輝き」ですね。
コンピュータのファイルをゴミ箱に突っ込んできれいになったと思っても、ハードディスクの中にはデータの欠片が残っているように、消された記憶の中でも大切な思いではひとかけらの輝きでずっと残っている。
それは消しようがないのでしょう。
ジョエルもクレメンタインも、記憶を消しても、その輝きに導かれるように再び出逢い、魅かれあいます。
けれども、互いに相手の記憶を消そうとしたことを知り、お互いに傷つく。
相手は自分を必要としていなかった。
自分も相手を必要でないと思ってしまった。
「恋愛睡眠のすすめ」に僕が乗り切れなかったのは、ステファンの現実逃避癖のため。
夢の中に逃げるのではなく、やはり現実に向かって欲しかった。
「エターナル・サンシャイン」が良いなと思ったのは、最後はジョエルとクレメンタインがお互いにもう一度やり直してみようと思ったこと。
またうまくいかなくなるかもしれない、けれどもやってみよう、いっしょにやってみたいと思った二人が輝いていました。
ジョエルが「OK?」と聞く。
「・・・OK」とためらいつつもクレメンタインが答える。
この台詞の言い方が、ジム・キャリーもケイト・ウィンスレットも良かったなあ。
ミシェル・ゴンドリー監督「恋愛睡眠のすすめ」の記事はこちら→
ケイト・ウィンスレット出演「ホリデイ」の記事はこちら→

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» エターナル・サンシャイン [hinemosu*theater*]
ー恋の痛みを知るすべての人へー
☆cast--------------------------------------
ジム・キャリー
ケイト・ウィンスレット
キルスティン・ダンスト
イライジャ・ウッド
マーク・ラファロ
☆crew------------------------------------
監督:ミシェル・ゴンドリー
脚本:チャーリー・カフマン
☆ストーリー------------------... [続きを読む]
受信: 2007年9月 8日 (土) 23時41分
» 映画『エターナル・サンシャイン』 [茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~]
原題:Eternal Sunshine of the Spotless Mind
確かに、ある特定の記憶を消してしまいたいことはある。・・だけど、例え失恋といえども恋の記憶は決して消してしまいたいなどと思ったことはない。
電車での出会いは、ジョエル・バリッシュ(ジム・キャリー)とクレメンタイン・... [続きを読む]
受信: 2007年9月 9日 (日) 18時50分
» 記憶と感情の永遠〜『エターナル・サンシャイン』 [真紅のthinkingdays]
「人は、一度巡りあった人と二度と別れることはできない」。これは大好きな小説
『パイロットフィッシュ』(大崎善生著)の冒頭。人間は記憶の集合体であり、過去の
記憶はすべて心の中の湖の底に沈んでいる・・。その記憶を消し去... [続きを読む]
受信: 2007年9月 9日 (日) 19時37分
» 『エターナル・サンシャイン』 [ラムの大通り]
------今日は楽しみにしていた『エターナル・サンシャイン』だね。
「そう。チャーリー・カウフマンと、
このしっとりラブのビジュアルの組み合わせが意外でね」
-------結果、どうだったの?
「やはり一筋縄ではいかなかったね。
別れた恋人クレメンタインが自分に関する記憶を
一切消してしまったことを知った主人公ジョエルが、
自分もその記憶を消そうと、彼女が施術を受けたのと同じ医院に出向く。
最初は新しい方の記憶から消されるため、
破局寸前のぎすぎすした感じが呈示されるんだけど、
記憶をさかのぼるに... [続きを読む]
受信: 2007年9月 9日 (日) 20時44分
» 「エターナル・サンシャイン」 [the borderland ]
バレンタイン前に別れてしまったジョエル(ジム・キャリー)とクレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)。仲直りをしようとジョエルはバレンタインのプレゼントを持って彼女に会いに行くが、まるで知らない人にあったような態度をされ、しかも新しい彼氏までできていた。実はクレメンスタインはジョエルとの記憶をラクーナ社によって消してしまっていた。それを知ったジョエルも彼女との記憶を消去するために、ラクーナ社を訪れる…
「マルコビッチの穴」「アダプテーション」のチャーリー・カウフマンの新作がラブストーリーと聞い... [続きを読む]
受信: 2007年9月10日 (月) 00時27分
» 『エターナル・サンシャイン』 [Sweet* Days**]
エターナル・サンシャイン DTSスペシャル・エディション
ジム・キャリー、ケイト・ウィンスレット主演。
恋人のクレメンタイン(ケイト)が自分の記憶を消した事を知ったジョエル(ジム)はショックを受け、彼自身もクレメンタインの記憶の消去を依頼する・・・・
SFチックでとっても不思議な、そして切ないラブストーリーでした。お互い愛し合い求め合ってるはずなのに上手くいかない2人。そして、相手の記憶を消すことが一番幸せになる方法だと思う2人。
この気持ち、分かりますよね。誰だって... [続きを読む]
受信: 2007年9月10日 (月) 07時26分
» エターナル・サンシャイン [悠雅的生活]
僕の中の君との記憶 [続きを読む]
受信: 2007年9月10日 (月) 08時42分
» エターナル・サンシャイン(映画館) [ひるめし。]
”さよなら”の代わりに、記憶を消した―――。
製作年:2004年
製作国:アメリカ
監 督:ミシェル・ゴンドリー
出演者:ジム・キャリー/ケイト・ウィンスレット/キルステン・ダンスト/マーク・ラファロ/イライジャ・ウッド
時 間:107分
[感想]
まずコピーに惹かれました。
これを観るためにチャーリー・カフマンの脚本の「マルコヴィッチの穴」を観て予習もしました。
恋愛映画をほとんど観ない私は今回はかなりの期待を胸に、いざ映画館へ!!
ドキドキ・・・・。
一言で言えば「よかった」映画か... [続きを読む]
受信: 2007年9月10日 (月) 14時35分
» エターナル・サンシャイン [Diarydiary!]
《エターナル・サンシャイン》 2004年 アメリカ映画 - 原題 - Eter [続きを読む]
受信: 2007年9月10日 (月) 19時39分
» エターナル・サンシャイン [映画を観たよ]
試写会行ってきました。
試験終わって一発目の映画です。
アメリカでは評判いいみたいでしたね〜。
アカデミー賞も獲っちゃいましたね。
この映画私はかなり好きです!!今、今年1番かも!!
もう"恋"と"切なさ"が溢れんばかりでした。
何て言うか・・・脚本はぶっ飛んでます!!
よくもまぁ考えましたねこんな話。
コロッコロッ画面が変わったり時間軸が変わったりするので
ちゃんと見てないと訳わかんなくなります。
記憶の過去の中、今現実で起こっていること混ざりに混ざっています。
それでもきちんとついていければ本... [続きを読む]
受信: 2007年9月11日 (火) 09時32分
» エターナル・サンシャイン [色即是空日記+α]
別れた恋人が人為的に記憶を消したことを知り、ジョエルも同様の処置を受けるためラクーナ社を訪れるが…。
最近、 「記憶モノ」 の映画が 多いですねぇ〜。
まぁ、そう云いながらどっぷり戦略にはまって 記憶系映画ばっか....... [続きを読む]
受信: 2007年9月11日 (火) 10時49分
» 「エターナル・サンシャイン」 [試写会帰りに]
観る前からドキドキしていた。これが映画に恋する事の出来る作品になるような予感がして。 始まる前からこんなにドキドキする事はいつだったか。ビッグ・フィッシュ以来? 観終わって、やはり、私が観たいと思っていた映像が、それ以上の映像を、思っていた以上のせつなさと..... [続きを読む]
受信: 2007年9月15日 (土) 20時56分
» エターナル・サンシャイン [BLACK&WHITE]
【Eternal Sunshine of the Spotless Mind】2004年/アメリカ
監督:ミシェル・ゴンドリー
出演:ジム・キャリー、ケイト・ウィンスレット、キルスティン・ダンスト、イライジャ・ウッド
口... [続きを読む]
受信: 2007年9月19日 (水) 02時12分
» エターナル・サンシャイン [★★むらの映画鑑賞メモ★★]
作品情報
タイトル:エターナル・サンシャイン
制作:2004年・アメリカ
監督:ミシェル・ゴンドリー
出演:ジム・キャリー、ケイト・ウィンスレット、キルステン・ダンスト、マーク・ラファロ、イライジャ・ウッド、トム・ウィルキンソン
あらすじ:ジョエル(ジム・キャリー)は、別れた恋人・クレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)が自分との思い出を消すために記憶除去手術を受けたことを知り、自分もその手術を試すが……。
...... [続きを読む]
受信: 2011年4月11日 (月) 23時19分
» “さよなら”の代わりに記憶を消した――「エターナル・サンシャイン」 [Addict allcinema おすすめ映画レビュー]
[続きを読む]
受信: 2012年2月 4日 (土) 23時34分
» エターナル・サンシャイン [Some Like It Hot]
■「エターナル・サンシャイン/Eternal Sunshine Of Spotless Mind」(2004年・アメリカ)
●2005年アカデミー賞 脚本賞
●2005年ラスヴェガス映画批評家協会賞 主演女優賞・脚本賞
監督=ミシェル・ゴンドリー
主演=ジム・キャリー ケイト・ウィンスレ...... [続きを読む]
受信: 2013年10月 3日 (木) 22時49分
» エターナル・サンシャイン ★★★.5 [パピとママ映画のblog]
記憶を除去する特殊な手術を受けた男女の恋の行方を描いたラヴ・ストーリー。監督・原案は「ヒューマンネイチュア」のミシェル・ゴンドリー。製作総指揮・脚本・原案は「ヒューマンネイチュア」「アダプテーション」のチャーリー・カウフマン。撮影は「アナライズ・ユー」...... [続きを読む]
受信: 2015年1月 7日 (水) 20時07分
» 『エターナル・サンシャイン』 [京の昼寝〜♪]
ldquo;さよならrdquo;の代わりに記憶を消した 失恋の記憶を消したいと思ったことはありませんか? 恋が終わった後の、あの胸の痛み。 悲しみと孤独を抱えながら傷が癒えるのをじっと待つよりも、 いっそのこと相手と過ごした日々の記憶を全部消してしまえ...... [続きを読む]
受信: 2015年1月 9日 (金) 08時32分
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