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2007年6月18日 (月)

「エターナル・サンシャイン」 消しようのない記憶の輝き

「恋愛睡眠のすすめ」のミシェル・ゴンドリーの出世作です。
本作については評判が良かったのは知っていたのですが、ずっと未見でいました。
先日会社の後輩と映画の話になった時、とてもこの作品を評価していたので、DVDで観賞しました。

「恋愛睡眠のすすめ」を観たとき、独特の世界観のある監督だなと思いましたが、その世界にあまりハマれなかったので、ちょっとこの作品に対しても不安感はありました。
けれども観てみると、この作品に関してはハマれました。
「恋愛睡眠のすすめ」では夢と現実、本作では記憶と現実の境目を飛び越え行き来する感じは共通している感じがしました。
記憶の中の世界がリアリティがあるけれど非現実という感じの表現がなかなか面白かったです。
「恋愛睡眠のすすめ」の世界は夢というよりファンタジーでしたが、本作の方が日頃みるような夢のよう。
いつの間にか場面が転換しているところや、自分を客観的に見ている自分がいるなんてところは、夢でもよくありますよね。
そのせいか本作の方がわかりやすくて、登場人物への感情移入もしやすかったかもしれません。
生活することに消極的で、人に対してとてもシャイなのは、本作のジョエル(ジム・キャリー)も「恋愛睡眠のすすめ」のステファンも似ていましたね。
監督もたぶんそんな人なんでしょう。

「大人ときたら、悲しみと不安だらけ」
クレメンタイン、そしてジョエルがお互いに相手の記憶を消そうと訪れるラクーナ社の受付のメアリーの言葉です。
メアリーは生きていくのに不安になるような記憶は消してしまった方がいいと思っています。
人生しばらく生きていると、忘れてしまいような記憶の一つや二つはありますよね。
特に好きな人を失ったことなど。
好きだったのに、結果的にはなんだか知らないけれど喧嘩別れしてしまったこと・・・。
思い出すと辛いので、いっそのことそんな記憶は脳みそのハードディスクから消し去ってしまいたいと思うことは誰でもあるんではないでしょうか。
けれども辛い記憶っていうものは輝いていたときの記憶とセットになっていることが多いですよね。
原題は「ETERNAL SUNSHINE OF THE SPOTLESS MIND」。
”SPOTLESS MIND”は汚れていない記憶(心)という意味でしょうか。
原題を直訳すると「汚れていない記憶の永遠の輝き」ですね。
コンピュータのファイルをゴミ箱に突っ込んできれいになったと思っても、ハードディスクの中にはデータの欠片が残っているように、消された記憶の中でも大切な思いではひとかけらの輝きでずっと残っている。
それは消しようがないのでしょう。
ジョエルもクレメンタインも、記憶を消しても、その輝きに導かれるように再び出逢い、魅かれあいます。
けれども、互いに相手の記憶を消そうとしたことを知り、お互いに傷つく。
相手は自分を必要としていなかった。
自分も相手を必要でないと思ってしまった。

「恋愛睡眠のすすめ」に僕が乗り切れなかったのは、ステファンの現実逃避癖のため。
夢の中に逃げるのではなく、やはり現実に向かって欲しかった。
「エターナル・サンシャイン」が良いなと思ったのは、最後はジョエルとクレメンタインがお互いにもう一度やり直してみようと思ったこと。
またうまくいかなくなるかもしれない、けれどもやってみよう、いっしょにやってみたいと思った二人が輝いていました。
ジョエルが「OK?」と聞く。
「・・・OK」とためらいつつもクレメンタインが答える。
この台詞の言い方が、ジム・キャリーもケイト・ウィンスレットも良かったなあ。

ミシェル・ゴンドリー監督「恋愛睡眠のすすめ」の記事はこちら→

ケイト・ウィンスレット出演「ホリデイ」の記事はこちら→

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