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2007年5月 4日 (金)

本 「ユグノーの呪い」

タイトルにあるユグノーとは、フランスでのプロテスタントの呼び名です。
サン・バルテルミーの虐殺という事件が、歴史の教科書でもでてきますが、これはカトリック側当時フランス国内で増えてきていたプロテスタント(ユグノー)を大量虐殺した事件です。
この事件が、この小説のストーリーにも関係してきます。
と書くと歴史ミステリーのように思えますが、この小説はまったく違う。
読み始めるとヴァーチャル記憶空間、ヴァーチャル療法士などSF的な言葉がでてきます。
この小説ではヴァーチャル療法士という職業があります。
脳の記憶をまるごとコピーする可能な技術がこの小説の中では開発されています。
ヴァーチャル療法士は、患者の記憶がコピーされた仮想空間に、自身もヴァーチャル化して入り、その世界に存在しているトラウマの原因を取り除いて治癒させる職業です。
ヴァーチャル記憶空間は患者の記憶が作り上げた夢に表れてくるような空間です。
そこではトラウマは人格化されていて、治癒させるためにはその人格を説得しなくてはいけない。
そしてその人格までたどり着くまでにいくつかの検閲という関門がある。
検閲が提示する謎を解くか、検閲自体を打ち破らなくては最終の人格にはたどりつけない。
このあたりは巻末の解説でも書いてありましたが、RPG的な要素もありますね。
この小説にでてくる患者のヴァーチャル記憶空間では、現代東京と16世紀のパリが渾然一体となって存在している。
夢の中でみる景色が不条理であっても、なぜかつながっていると納得してしまうように。
患者の記憶空間では、歴史事実とは異なりユグノー側がカトリック側を殺害している。
それは何故か。
患者は何故見たことのないはずの16世紀パリを記憶として持つのか。
この辺りがミステリーの中心になります。
今まで書いたようなことからすると、この小説は歴史ミステリーとも、SFミステリーとも、心理ミステリーとも思えます。
そのどれでもないのかもしれません。
読んでいけばいくほど、そんなジャンル分けなど関係なくなるほどに引き込まれていきます。
決して読みにくい小説ではないので、読み始めれば一気にやめられずに読んでしまうような小説です。

「ユグノーの呪い」 新井政彦著 光文社 文庫 ISBN978-4-334-74214-0

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