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2007年5月12日 (土)

本 「宇宙からの帰還」

立花隆氏の著作で、アポロ計画までの宇宙飛行士へのインタビューからまとめられたノンフィクションです。
地球を宇宙から実際に見たことがある人は、スペースシャトルの時代になっても限られた数しかいません。
確かに僕たちは宇宙から撮影された地球の写真などは何度も見ています。
けれどもやはり自分の目で地球を眺めた時、そこで受けるものはかなり大きいものがあるようです。
そのとき何を感じたか、その体験がその人のその後の人生にどう影響を与えたのかを追っているのが、この作品です。
宇宙飛行士を辞めたあと、その経験者はさまざまな転身を図っています。
政治家になった人、宗教家になった人、実業家になった人、また精神を病んでしまった人・・・。
宇宙での体験はそれぞれの方の人生に大きなインパクトを与えたようです(そんなものはなかったという方もいるということですが)。
そのなかでも比較的共通しているのが、地球というものの儚さ、唯一さみたいなものを感じた方が多かったようです。
宇宙空間はそれこそ生命というものが全く存在しない場所。
その中で唯一、地球だけが青々と生命を宿している。
けれどもそれは広大な宇宙に比べてとても儚く見える。
アポロ計画当時は冷戦まっただ中であり、中東やベトナムでも戦争があった時代です。
小さな地球でそこに暮らす人間同士の争いがとても小さく見える。
無意味に見える。
生命のない宇宙において地球が存在していること、そのことに感動を覚えるということです。
そこに神を見るという人もいました。
神は信じない人でも、その地球が存在していることにそれ自体に感情を揺さぶられるようです。
この本を読んでいて、先日読んだハイデガーの話を思い出しました。
<世界が存在すること>が存在することに驚く。
それを感じるのが存在神秘という体験。
ハイデガーが生きていて、宇宙船から地球を見たらどう思うのだろうと思いました。

「宇宙からの帰還」 立花隆著 中央公論 文庫 ISBN4-12-201232-5

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