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2007年4月28日 (土)

本 「銀輪の覇者」

太平洋戦争前の時期、日本で開催された(フィクションです)本州横断自転車ロードレースを舞台にした小説です。
ロードレースとは、「ツール・ド・フランス」などが有名ですけれども、チームで長距離を数日かけて走破する自転車レースです。
最近「オーバードライヴ」という漫画でも取り上げられているので、ご存知の方も多いかと思います。
自転車というのは思いのほか風の影響が大きい乗り物です。
自転車競技ともなるとその速度自体が大きいため、空気の抵抗も大きい。
自転車のチームは走行するとき、一台づつ縦列で並びます。
これは一列に並ぶことにより、先頭車両が風受けになって、その後の車両は風の抵抗を受けにくくするためです。
当然、先頭は体力の消耗が激しくなるためずっと風受けになるわけにはいけません。
そのため先頭車両をローテーションで順繰りに変えていきます。
またチームの構成メンバーも瞬発力が強いタイプ、持続力があるタイプ、坂道が得意なタイプ、どの地形でも対応できるタイプなどをそろえ、地形や他チームの動向にあわせ、全体のペースやアタッキングポイントをどうするかなど極めて戦略性が高いスポーツになります。
また逆に自転車を走らせるのはあくまでその車両に乗っている個人なので、過酷なレースにどこまで踏ん張るれるかというのは人間力まで問われる個人の力が試されるスポーツでもあるわけです。
こういう戦略性、個人の力の双方が必要とされるスポーツであるロードレースを素材に使い、エンターテイメント小説として、この作品は良くできていると思いました。

レースに挑むにあたり即席にできた主人公響木のチーム。
そのメンバーはすべての人間が、過去や背景に謎があり、それぞれの思惑でそのチームに参加しています。
そういう思惑がありつつも、彼らはレースを続けるうちに次第に仲間としてまとまっていきます。
山師的な大会主催者、大会を賭博に使おうとする仁義に厚いヤクザもの、軍の不正を暴こうとする特高警察、自転車部隊を創設しようとしている軍隊など、さまざまな組織や個人がそれぞれの目的でレースを利用しようとします。
そのあたりが絡み合っていきながらストーリーが進んでいくさまはおもしろいですね。
キャラクターの書き込みはややオープンだったので、深みがない感じがしましたけれども、十分合格点でしょう。
後日談はちょっと余計な感じもしました。
レース終了で終わらせた方が盛り上がって終わったかもしれません。
ともあれ、自転車好きな人は楽しめる小説だと思います。
そろそろいい季節なので、自転車で河沿いでも走ってこようかなあ。

「銀輪の覇者」 斎藤純著 早川書房 ハードカバー ISBN4-15-208562-2

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