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2007年1月 2日 (火)

「シリアナ」 複雑化する世界

中東のオイルマネー、利権に関与するアメリカ政府、アラブの王国、オイルカンパニー、弁護士、テロリストなどがそれぞれの思惑に従い、行動し、関係していく模様を描くドラマです。

物語の中盤になるまで、どのような展開になるのかわからないので、観ていてとてもフラストレーションがたまります。
登場人物が多く、またさまざまな場所でそれぞれ物語が進行していくので、全体像が把握しにくいですね。
最後にはそれらがすべて繋がっていることがわかってくるのだけれども、観ていて油断しているとなんだか訳がわからなくなってしまいます。
この映画の登場人物にはわかりやすい記号は貼られていません。
この人はイイモノ、あの人はワルモノといったような。
なんでも最後には解決してしまう主人公や、すべてを計画している黒幕のような人物もいません。
登場人物たちは自分がいる状況の中、自分の信念や主義や欲望に従い行動します。

命令によって不法な武器取引や暗殺を行うCIAのエージェント、ボブ。
テロとの戦いなどという信念はこの人物には感じられません。
淡々と与えられた命令に従って職務を遂行していき、拷問にも耐え抜きます。
けれども使い捨ての駒のように切られ、そしてナシール王子の暗殺が再び計画されたことを知った時、彼は再びベイルートに向かいます。
その行動には正義といったものは感じられず、自分を裏切った組織への当てつけのようにも見えました。

スイスのエネルギー・アナリスト、ブライアンはアラブの石油王のパーティに家族で招かれた時に、事故で息子を失うという悲劇に見舞われます。
しかしその時にアラブの王国の第一王子ナシールと知り合い、彼が改革派であることを知ります。
いつしかブライアンは王子のブレーンの役割のようになり、自分の考えが実現し、社会を変えることができそうな快感を味わいますが、その時彼は死んだ息子のことをすでに忘れてしまっています。

ナシールはアラブの石油産油王国の第一王子、そして次期王座を弟と争っていました。
ナシールは閉鎖的で伝統的なアラブ王国の体質を変えたいと願っていますが、アメリカによる頸城から離れようとするためにテロも厭いません。
ブライアンはそんな彼を進歩的で尊敬すべき人物とみますが、アメリカは彼を自国にとって危険な人物だとみなします。

その他にも様々な登場人物が自分の思惑で動きます。
弁護士で野心家のベネットは、企業合併を成立させるために司法省との取引に応じ、生け贄として自分の上司をも捧げます。
パキスタンからの出稼ぎ労働者ワシームは突然の解雇により職を失ったとき、真摯に自分たちの教義を語るイスラム過激派の組織に影響されていきます。

ラストは救いのない結末で、正義は必ず勝つといったようなお気楽なことはいっさい語られず、冷徹なまでに陰謀の勝利になります。
そもそも正義とはなんなのか。
アメリカ側から見たら、アメリカの利益を追い守るのが正義でしょう。
イスラム側から見れば、自分たちの仕事や信教の自由を守るのが正義でしょう。
そして登場人物たちは自分たちの正義を貫くためには、悪いことに手を染めることも厭いません。
人や国が自信の欲望や主義によって行動していく様子に暗澹たる気持ちになります。
しかしすべてをコントロールしている人物もこの映画にはでてこない。
それだけ世界が複雑化し、人間自身でもコントロールできないほどに世界は絡み合い不安定な状態になってしまっているのかもしれません。
そういう意味ではわかりにくい序盤は、複雑化した世界を描いていると言えるかもしれません。

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コメント

mezzotintさん>
TBうまくいかないということで、申し訳ないです。

内容複雑でしたねー。
僕はDVDで観たのですが、半分くらいまでいってからわからなくなり、もう一回最初から見直しました。
救いのない結末ですが、へたなハッピーエンドよりもリアルさがでていたような気がします。

投稿: はらやん(管理人) | 2007年1月13日 (土) 22時55分

はらやんさん
TBどうもですm(__)m
やはりお返しのTBできず・・・(T_T)/~~~
シリアナ、懐かしい映画です。
ジョージ・クルーニーが体を太らせて、臨んだ映画
でしたね。現代の状況をリアルに映像化!
ちょっと複雑なもんで、困りました^_^;

投稿: mezzotint | 2007年1月 8日 (月) 22時09分

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