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2007年1月 8日 (月)

「ロスト・イン・トランスレーション」 思いがロストしてしまうのは・・・

僕としては期待度が高い「マリー・アントワネット」が公開間近なので、ソフィア・コッポラ監督の映画「ロスト・イン・トランスレーション」を予習を兼ねて観賞しました。

"translation"は翻訳という意味。
「ロスト・イン・トランスレーション」は翻訳する際になくなるものといった意味でしょうか。

日本企業のCMの撮影のために東京を訪れた映画俳優のボブ。
カメラマンの夫の仕事についてきて東京に滞在しているシャーロット。
二人とも日本語も話せず、周りの日本人とコミュニケーションがとれず孤独を感じています。
同じホテルに泊まっている二人は、お互いに同じような思いを感じていることがわかり、親しくなっていきます。

「ロスト・イン・トランスレーション」というタイトルが象徴的にわかるのが、ボブがCMの仕事のシーンです。
演出家の指示がボブにきちんと伝わりません。
明らかに演出家はいろいろ指示をしているはずなのに、通訳が端折ってしまっているわけです。
トランスレーションをする際に、意味がロストしています。
日本という異境を訪れた二人の異邦人、そこでのディスコミュニケーションから感じる孤独感を淡々と描いていきます。

けれどもタイトルに込めた監督の思いはもっといろいろあるように感じました。
二人が孤独を感じているのは、言葉の通じない異境にいるからでしょうか。
ボブはアメリカに帰り、家族といっしょに暮らしたらその孤独感はなくなるのでしょうか。
シャーロットは夫が仕事からもどり、いっしょにいられたら寂しさはなくなるでしょうか。
そうではないのでしょう。
同じ言葉が話せれば自分が伝えたい意味、思いは相手に通じるのでしょうか。
相手に対して、自分の口から言葉を発した時、何か自分の本当の気持ちとは違ってしまっているということはありませんか。
ボブは遠くアメリカにいる妻と電話で何度も話をします。
単語だけを拾っていくと、そこには相手のことを考えていたりするような言葉はあります。
けれどもそこで思いの交流がなくなっています。
同じ言語を話していても、思いを言葉にトランスレーションした瞬間に、思いはロストしてしまっています。

同じような孤独感を感じるボブとシャーロットも、ボブが日本を離れる時、英語で別れの挨拶をしていても、何故か思いは交流しません。
けれども街なかでシャーロットを見つけ追いかけて、そして抱きしめます。
ここでボブは劇中で初めて笑います。
ホテルで別れた時に伝えたいことが伝えられた満足感でしょうか。
思いが相手に伝わらずロストするのは、翻訳や言葉の問題だけではないのでしょう。
ボブはいい夫であるため、妻に孤独感を伝えようとしなかった。
シャーロットはよき妻であるため、夫に寂しさを話そうとしなかった。
わかってくれないでは、いつまでたっても思いは伝わらない。
相手に伝えたいという思いこそが、自分の思いを伝えるものなのでしょう。

ソフィア・コッポラ監督の作品は初めて観ました。
若手にありがちな変に凝った映像を撮るというよりは、淡々と二人の気持ちや日本の風景を描くのに好感が持てました。
「マリー・アントワネット」への期待度高まります。

あとスカーレット・ヨハンセン、やはり美しいですね。
「アイランド」の時よりもちょっとぽっちゃりしていて幼い感じがかわいらしくもありました。
きれいなおみ足をやたら見せてくれるので、目の保養にもなりましたです。

ソフィア・コッポラ監督「マリー・アントワネット」の記事はこちら→

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コメント

奈緒子さん>

見慣れた景色を、外国人の目を通して見るのは何か不思議な気がしますね。
先日「マリー・アントワネット」も観てきましたが、良かったですよー。

投稿: はらやん(管理人) | 2007年2月 1日 (木) 21時17分

TBありがとうございます♪
「LOST IN TRANSLATION」ってどう訳すのか難しいですね。
いろいろ考えてもしっくりくる日本語ってないですが、
「五里霧中」なんてどうかなぁと思っています。
『マリー・アントワネット』も楽しみですね~。

投稿: 奈緒子 | 2007年2月 1日 (木) 13時28分

ヨメさん>

ソフィア・コッポラ監督の作品は初めて見ましたが、とても良かったです。
自分の気持ちが伝わらない、伝えられない孤独感がよくでていたような。
来週から「マリー・アントワネット」が公開されますね。
なんとなくオーストリアからフランスへ若くして嫁いだマリー・アントワネットも同じような気持ちをもったのではと考えてしまいます。
ソフィア・コッポラの描くマリー・アントワネットに期待度高まりました。
お薦めいただいた「ヴァージンスーサイズ」も今度観てみます!
ではまた!

投稿: はらやん(管理人) | 2007年1月14日 (日) 23時08分

TBさせていただきました。
すごく素敵な映画でしたよね。ソフィア・コッポラの第一回監督作「ヴァージンスーサイズ」もお勧めですよ☆

>同じ言語を話していても、思いを言葉にトランスレーションした瞬間に、思いはロストしてしまっています。

まさに!!タイトルの意味をちゃんと理解せずに映画を観てました・・・でも確かにこういう事なんですよね。勉強になりましたm(_ _)m

投稿: ヨメ | 2007年1月13日 (土) 14時19分

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