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2006年11月13日 (月)

本 「魔女とカルトのドイツ史」

この本ではカルトを「カリスマを狂信的に信奉し、集団妄想によって引き起こされた異常な宗教的・社会的行動」と定義し、その原因となる背景をドイツ史を通じてひも解こうと試みている。
ドイツでは、舞踏病や魔女狩りからナチスにいたるまで、カルト的な歴史的な事件が起きている。
有名な「ハーメルンの笛吹き男」伝説もカルト的なものの一つらしい。

著者はキリスト教的な教義とそのために隠されてしまいデモーニッシュ化されたゲルマン神話の関係や、真面目でやるとなったら論理的に徹底して行う側面と、魔術等に魅力を感じる非論理的な側面という二つ持つドイツ人気質というのものが、カルトの背景であると言っている。

また歴史的な分析からカルトの発生するメカニズムを次のように説明している。
人間に限らず動物もストレス過多の状況になると、パニック状態になることがある。
動物はパニック状態になると、群れの中の弱い者がいじめられたりするが、人間はそのストレスを発散する仕組みを編み出した。
それがカーニヴァルや祭りであるが、それは鬱積した感情を発散させる役割だった。
しかしキリスト教などの宗教が広まり、その教義による縛りが強くなると、原始より伝わってきていたそのような風俗が禁止される。
それにより抑圧された感情がカルト的なものとして爆発するということらしい。
そういえば中世のユダヤ人迫害はペスト禍の後に起こり、ナチスは第一次大戦後のあとの窮乏したドイツの状況で発展した。
爆発の矛先はどの時代でも弱者に向かう。
それが魔女とされた女性であったり、ユダヤ人であったりしたのだ。

しかしドイツ人だけがカルト的であると言っているのではない。
カルト的になってしまう危険性はどの国民でもある。

「わが総統!・・・無限の愛を込めて、わたしは日々神さまに感謝せざるを得ません。神さまがその恩寵を通じ、わがドイツ民族にかくもすばらしい総統をお恵みくださったからです。」

これは本書の中で引用されているヒトラーのシンパの一兵士の手紙である。
この熱狂はどこかで聞いたことはないだろうか。
そう、北朝鮮の国営放送はいつもこんな感じではないだろうか。
でも日本は違うのでは?
果たしてそうか?

「・・・それぞれの効果的なプロパガンダは、ポイントを極力しぼり、これをスローガンのように継続的に使い、その言葉によって意図したことを、最後の一人までもがはっきりとイメージできるようにしなければならない。」

これもこの本の中で引用されている一文である。
出典は何かというと、ヒトラーの「我が闘争」である。
結構これを読んで驚いた。
この文章の状況、どこかで似たようなものを見たことないか?
まさに小泉首相の郵政民有化を掲げた総選挙はこんな感じではなかったか。
誰も郵政民有化の中身はよくわからず、口当たりの良いスローガンや、首相の自信のある口ぶりに舞い上がりはしなかったか。
そういえばヒトラーのナチスドイツも選挙で選ばれたのであった。
昨今問題になっているいじめも、抑圧されたものの弱者への爆発と考えられなくもない。

ドイツ史とあるタイトルからカルト化される危険度がドイツ人が高いというふうに思ってはいけない。
ドイツ人でなくてもカルト化する危険性はあり、そのメカニズムはドイツ史を研究するとわかりそうだとこの本では言っている。
ドイツの歴史の中で得た教訓を、私たちも他山の石として学んでいかなければならないと思う。

「魔女とカルトのドイツ史」 浜本隆志著 講談社 新書 ISBN4-06-149705-7

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