本 「今夜は眠れない」
”いちばん速く駆けるものが必ずしも勝つわけではなく、勝っているように見えるものが必ずしも勝者ではないということを”
この作品のラスト近くで語られている言葉です。
ちょうど同じタイミングで、こちらも宮部みゆきさんの「ブレイブストーリー」も併読していましたが、同じ趣旨のことが書いてありました。
宮部みゆきさんの小説には、ミステリーにせよ、ファンタジーにせよ、自分のことばかり考える人が出てきます。
一見、この人たちは成功しているようにも見えるし、自分でもそう思っているのですが、実は大事なことを忘れている人たちです。
対して、善良な心をもった人々も登場してきます(本作のように概して少年であることが多い)。
その子たちは少年から大人になる途中、親という庇護を離れ世間というものに触れていきます。
その中で、人というのは思っていたほど善良ではなく、世界には悪意をもった人もいるのだということに否応なく気づかされます。
自分のために人を押しのけることを厭わない人(それが親だったりすることもある)がいることに、傷つきます。
しかし宮部みゆきさんの小説にでてくる少年たちは、傷つきながらも、世界を受け入れ、その上であきらめずやはり善良であり続けようと選択します。
それがしばしば宮部みゆきさんの作品ででてくる言葉「勇気」でしょう。
この作品のレビューに全然なっていませんが、「今夜は眠れない」はそんな宮部みゆき作品に通じるテーマを味わうのに、ミステリー苦手な人でも入りやすい作品です。
「今夜は眠れない」 宮部みゆき著 中央公論新社 文庫 ISBN4-12-203278-4
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コメント
shinainaruhitoniさん>
宮部みゆきさんはいいですよね。
いろんなジャンルを書いているのに、どれもレベルが高いのがすごいです。
shinainaruhitoniさんはファンタジーがお好きなんですね。
「ブレイブ・ストーリー」を先日読了しましたが、映画より断然おもしろかったです。
投稿: はらやん(管理人) | 2006年12月17日 (日) 21時13分
TBありがとうございます。宮部みゆきはいいですねぇ。特に現代もの、SFファンタジー系がすきです。
投稿: shinainaruhitoni | 2006年12月17日 (日) 03時02分