本 「陰摩羅鬼の瑕」
京極堂シリーズの文庫版「陰摩羅鬼の瑕」を読みました。
分冊でない方を購入しましたが、相変わらず厚いです。
厚いですが、さすが京極夏彦さんですので、ぐいぐいと引き込まれてしまい、一気に読んでしまいました。
「世の中には不思議なことなど何もないのだよ」
これはこのシリーズで京極堂がしばしば口にする言葉です。
この言葉の意味は、世の中の見え方というのはそれぞれの人によって異なり、その違いによってあることがある人にとっては不思議なことに見え、そうでない人には何も不思議ではないことに見えるということでしょう。
京極堂の憑き物落しはそのものの見方を変換することによってなされます。
本作でも世の中のものの見方、世界観が物語の芯になります。
僕たちは普段生きていて当たり前だと思っていること、常識・倫理・道徳・通念・記憶というものは、誰にとっても同じもので、しばしばどの時代においても同じだと思いがちです。
しかしそんなことはなく、江戸時代の常識と現代の常識は無論異なります。
そして同じ現代であっても、その当たり前だと思っていることも人それぞれで違うかもしれません。
本作では誰にとっても常識として認識しているけれども、改めて説明しようとするとできない「死」というものがテーマになっています。
何が「死」かというのは、法律上、倫理上、宗教上さまざまな定義があります。
そして誰にとっても「死」は不可逆的なものであるがゆえ、誰もその定義の正しさを証明できません。
本作の謎解きに僕は唸らされました。
人のものの見方、世界観・死生観というものを謎解きのキーに使った作者のアイデアに感服しました。
新書で京極堂の新作が出たようです。
本作を読んで文庫でやっと追いついたので、今度は新書に手をだそうと思っています。
「陰摩羅鬼の瑕」 京極夏彦著 講談社 文庫 ISBN4-06-275499-1
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コメント
由香さん>
京極夏彦さんは名前は知っていたのですが、ずっと避けてました(とっても厚いから)
一昨年くらいに知り合いから本をいただいたのがきっかけで読んだのですが、すっかりハマってしまいました。
早く続きが読みたいなあと待っているような感じです。
「魍魎の匣」の映画化も決まったようで、こちらも楽しみに待ってみようと思います。
本のレビュー、楽しみにしていただいているということでありがとうございます。
映画よりも本のレビューの方が難しいですね。
なかなか上手にまとまらなくて・・・。
投稿: はらやん(管理人) | 2007年1月17日 (水) 23時07分
はらやんさん、こんばんは!
先程はこちらにご訪問下さり有り難うございました。
これ、これ、この本です。私の「これから読む本」に
ずっと鎮座している本は(笑)
京極夏彦は大好きで、京極堂シリーズや又市シリーズで、
いつも妖しの世界を堪能していました。
彼は凄い作家ですよね。直木賞を獲るのが遅かったと
思いました。
はらやんさんのレビューで、早く読みたいな・・・と
思ったのですが、いつになりますことやら。
本のレビューも楽しみに読ませて頂いておりますので、
またお邪魔させて下さいね。
投稿: 由香 | 2007年1月14日 (日) 19時42分