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2006年9月23日 (土)

「WXIII 機動警察パトレイバー」 世界観の引き継ぎは完璧、でも小品

「機動警察パトレイバー」は1988年からOVAシリーズでスタートし、漫画、テレビ、映画と幅広く展開して、メディアミックスの走りとも言われています。
原作はヘッドギアというこの作品のためのクリエイティブ集団。
押井守、伊藤和典、ゆうきまさみ、出渕裕、高田明美、錚々たるメンバーです。
その中でも映画を監督した押井守さん、脚本を担当した伊藤和典さん(平成「ガメラ」脚本)の「パトレイバー」ワールドへの影響力は大きいと思っています。

伊藤和典さんは「ガメラ」シリーズでも見せたように、現実世界へ異物を投入したときにどう世の中は対応するのかということを、細やかにリアリティを持って描くことにおいて右にでる人はいないのではないかと思います。
「ガメラ」では怪獣出現に対する国としての対応、「パトレイバー」ではロボットが一般化された時の社会状況の変化といったことを見事にシミュレートしてみせてくれます。

押井監督は、都市や国家という巨大なシステムが作り上げる虚構の世界をこのシリーズで描いているように思えます。
映画一作目では現実世界(ハードウェアワールド)が、虚の世界(ソフトウェアワールド)にコントロールされるほど脆弱であるかを見せ、二作目では平和国家が如何に虚構のものであるかを描いています。
また「パトレイバー」の中心となる第二小隊の面々は組織の中では異質な集団(アウトサイダー)でありながら、結果的にはシステムをリセットしようとする相手(さらなるアウトサイダー)と戦うことになるジレンマを描いています。

そういう意味では映画二作はかなりテーマ性が高いシリーズだと言えます。
(OVA、テレビシリーズはもっとハチャメチャな感じでそれはそれでおもしろいですが)

前段が長くなってしまいましたが、このような世界観が好きだったので、三作目の映画のスタッフに押井守、伊藤和典のクレジットがなかったので、やや不安もあり劇場では結局見ずじまいでした。
ですが最近、ケーブルテレビで放送していたのでやっと「WXIII 機動警察パトレイバー」観てみました。
やはり先ほどのお二人が抜けていた分、予想通りクセのあるテーマ性は薄いように思えました。
ただし、「パトレイバー」ワールドの感触といったものは上手に引き継いでいたと思います。
細かな設定の作り込み、背景のリアルさ、シーンやカットの見せ方等は前二作にひけをとらないかと思います。
もともと「パトレイバー」は懐の広い世界観をもっているので、怪獣などがでてきても許容できると思います。
でも映画としては小品な印象はぬぐえなかったです。
ビデオシリーズの一つのエピソードだったらOKだったのかもしれませんが。
やはりテーマ性のところの弱さでしょうか。

最近公開された「グエムル 漢江の怪物」が本作をマネしているというのでは?というのが話題になっていましたが、見るかぎりクリーチャーは確かに似ているニュアンスですが、お話は全然違うので盗作などというのはちょっと酷かなと思いました。

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「グエムル 漢江の怪物」の記事はこちら→

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コメント

コメントしてくださった方へ

押井守さんの作品は僕はテーマがあると思っています。
独特の台詞回しが表面的な特徴となっていますが、彼の作品は自分がいると思っている世界への不確かさの不安、不安定さ、脆弱さみたいなものを共通して描いていると思います。
「うる星やつら ビューティフル・ドリーマー」、「甲殻機動隊」などはその色が濃い作品だと思います。
ちなみに本作は「パトレイバー」とタイトルにあるものの、押井さんはタッチしていません。
またヘッドギアは「パトレイバー」のために、メカデザインの出渕裕さん、漫画のゆうきまさみさん、キャラクターデザインの高田明美さん、脚本の伊藤和典さん、そして演出の押井守さんで、作ったユニットです。

投稿: はらやん(管理人) | 2009年7月30日 (木) 23時33分

ヘッドギアって押井さん中心の集まりでしたっけ?違う感じがしますが。
以下は、wikiの記事です。

押井は基本的なプロットが固まりつつあった時点での参加であったため、それに関する不満も多かったと語るが、当時の押井は難解な作品を作るとして敬遠され、業界を干され生活が困窮しており、これによって救われたとも語る。

投稿: | 2009年7月29日 (水) 10時41分

押井守さんに一体テーマ性があるのでしょうか。子供が食いつきそうなもの、彼らの目にカッコよく見えて仕方のないもの、端的に言えば学術用語などを散りばめているだけに自分には見えます。
押井さんをどうしてこんなに、世の中が偏重しているのかさっぱりわかりません。
きちんと色々な人を評価してあげないと、押井さん偏重の陰で、本当にもっともっと上を行く才能を死なせてしまっているように思えて残念でなりません。
押井さんの話す理屈は、面白いこと言うな、と思うことが近年よくありました。
だけど、作品は別です。

投稿: | 2009年7月29日 (水) 08時25分

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