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2006年8月15日 (火)

「2001年宇宙の旅」 カメラの視点で表現したかったことは・・・

「2001年宇宙の旅」を久しぶりに観ました。
初めて観たのは中学生の時、もう20年以上前です。
そのときは内容がさっぱりわからず、映像的な斬新さに目を見張っていただけですが、数年ぶりに観ても、全然古くないですね。

改めて観て感じたのは、1カット1カットが絵画のようにきちんと構図が計算されているなということです。
撮影技術の発展によって最近の映画はカメラが激しく動いて迫力はあるのですが、よく見ると荒っぽかったりしますが、本作品はそういうところがないように感じます。
「2001年宇宙の旅」はとても長いカット(それもカメラも固定)が多いですが、それでも見飽きないのは、画面が美しく構成されているからかもしれません。

ついでに観ていて思ったことを。
本作品では、「視点」の切り替えという点に注目するとおもしろいです。
後半のスターゲイト突入まではカメラの視点は、あまり動くことはありません。
太古の猿人の時代、軌道上のステーション、月、ディスカバリー号、舞台は変わりますが、カメラはずっと客観的な位置を保ち続けます。
登場人物の視点はほとんどなかったと思います。
出来事を淡々と移していく視点、上空から観る客観的な視点は、「神の視点」のようにも感じます。

それがスターゲイトをボーマンが通過するところで、カメラは突然視点を変えます。
ボーマンが観た目まぐるしい風景(人類創世の歴史の真実の姿?)を、ボーマンの視点で映します。
カメラはここで主観的になります。

そしてボーマンがたどり着いた場所で、三たびカメラは視点を変えます。
ボーマンが、老いたボーマンを見、そしてまたそのボーマンが、さらに老いたボーマンを見る。
主観と客観が目まぐるしく変わります。
そしてボーマンはスターチャイルドに生まれ変わる(もしくは同一化する?)。

スターチャイルドは人類を生み出した個を超越した生命体のように思えます。
そのような生命の視点は、主観と客観が入り交じったものであるかもしれません。
神の客観的な視点、人間の主観的な視点、そしてそれが同一化し混在化した視点。
人類のスターチャイルドへの進化をカメラの視点からも表しているように感じました。

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コメント

>kazuponさん

私も何年か前に映画館でこの映画を観た時、かなり感激しました。
それまではビデオでしか観たことなかったので。
ため息でるほど美しいデザイン、構図、ほんとに古びない映画です。
細かなところまで吟味されている映画で、観るたびに発見があります。
自分も年齢でそのたび少なからず見方も変わってくるので、それもおもしろいところです。

投稿: はらやん(管理人) | 2006年10月24日 (火) 20時29分

こんにちわ!
いつもお世話になっております。TB
ありがとうございました。
記事にも書いた通り、大阪の映画館が
閉館する際に特別上映してくれたので、
スクリーンで観たんですけど、ずっと
DVDで観ていたのとはかなり違う
感覚で入り込めた気がします。
ほんと書かれている通り、今観ても
全然古さを感じない、むしろカッコイイ
と思えるほどでした!

投稿: kazupon | 2006年10月23日 (月) 20時45分

TBありがとうございました。カメラの視点ですか。気づきませんでした。それにしてもこの映画は、何度見ても新しい発見がありますよね。ラストの解釈の仕方は、自分のその時の環境とか知識とか気分によって、いろいろ変わったりします。それがまたこの映画の癖になるところです。またお邪魔させていただきます。

投稿: ガラリーナ | 2006年9月11日 (月) 22時57分

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