「国宝」二人の生き様
吉沢亮、横浜流星という新旧の大河ドラマ主演俳優をメインキャストに配した豪華なキャスティングです。
さすが今、旬の二人だけあって演技はなかなかの見応えでした。
本作は歌舞伎が題材になっており、二人とも数ヶ月も本格的な稽古を積んだということです。
劇中で見られる歌舞伎の所作や声の出し方にその稽古の成果が現れていると思います。
実はこの二人、吉沢亮さんがブレイクしたきっかけとなる「仮面ライダーフォーゼ」で演じた仮面ライダーメテオで共演しています。
当時は横浜流星さんはほぼ無名(その後「トッキュウジャー」でトッキュウ4号に抜擢)でしたが、吉沢亮さんが演じるメテオこと朔田流星の親友という役所でした。
吉沢さんの役名が、横浜さんの名前と一緒というのも何か運命的でもありますね。
横道外れてしまいました。
吉沢さん演じる喜久雄は親が極道でしたが、抗争のため親は死に、その後歌舞伎役者である花井半二郎に引き取られます。
その半次郎の息子であり、後継とみなされてたのが横浜さん演じる俊介。
本作は年が同じであるこの二人の半生が描かれます。
二人とも歌舞伎に魅入られ、その道を極めようとします。
喜久雄は天性の才を持ち、メキメキと頭角を表していくにつれ、俊介は自分の力のなさを感じ、逃げ出します。
また喜久雄は歌舞伎社会という伝統と血が重んじられる社会の中で、自らの出自のためにさまざまな障害で阻まれます。
二人は対立しながらも、お互いを認め合い、唯一無二の関係性を作っていきます。
それぞれが多くのものを犠牲にしながら、芸の道を究めていこうとします。
なぜ、すべてのものを犠牲にすることがわかっていながらも、魅入られるのか。
本人たちにも本当のところはわからないのかもしれません。
何かそこまで行けば、見える景色があるかもしれないという思い。
喜久雄が歌舞伎界から追放されて、地方のドサまわりをしている時の屋上のシーンが秀逸です。
彼は芸しか見えていない。
ずっと彼に付き従ってきていた女性も、自分のことを見ていないことによって去っていってしまう。
全てを失ってしまっても、彼は踊っている。
泣きながら、笑いながら。
それしか彼にはないから。
その時の吉沢さんの演技は鬼気迫るものがありました。
また横浜さんも素晴らしい。
俊介は糖尿病により片足を切断することになっても、なお舞台に立とうとします。
彼と喜久雄が一緒に舞台になった時、喜久雄はもう一方の足も壊死になりかけていることに気づきます。
痛みに耐えながらも俊介は死に物狂いで舞台を務める。
その思いをわかっているから喜久雄も舞台を続けようとする。
この二人の掛け合いが鳥肌が立つほどの緊張感がありました。
歌舞伎の興行を担当する会社の社員、竹野が彼らの舞台を見てつぶやきます。
「あんな生き方はできない」と。
何もかも、自分の命すら犠牲にしながらも、芸の道を極めようとする二人の生き様がそこにはありました。
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