2021年5月 1日 (土)

「るろうに剣心 最終章 The Final」 剣心アクションの集大成

緊急事態宣言が三度出てしまい、GW映画に公開予定の映画が軒並み公開延期となってしまいました。
本作はその前の週に公開直後に鑑賞に行ってきました。
人気シリーズ「るろうに剣心」の最新作で最終章となります。
第一作を見たときに本作の新しいアクションに衝撃を受けました。
日本の剣劇、いわゆるチャンバラはある種のリズムがあります。
緩急と言いますか、静と動の組み合わせが独特のリズムを産んでいると思います。
まさにチャンバラという言葉は刀が組み合う音を表していますから。
最近の映画はかなりテンポが速くなっているとは思いますが、それでも独特のリズム感はあると思います。
それが「るろうに剣心」はない。
というより、ずっと攻撃を連打しているような感じですよね。
リズム的には格闘ゲームのコンボのようなイメージが近い感じがします。
時代劇にワイヤーアクションを本格的に取り入れたところが新しいところですが、ハリウッドのようなふわっとしたワイヤーアクションとも違う。
それよりは肉と肉がぶつかり合っている感じがします。
一番近い感じがするのはいわゆるカンフー映画でしょうか。
このシリーズのアクション監督を務めている谷垣健治さんのカラーが出ているかもしれません。
本作ではアクションは「るろうに剣心」らしさをさらにパワーアップした派手なものになっているように思いました。
剣心と宗次郎がタッグを組んでの二対多のアクションシーンはかなり密度が高かったです。
二人の剣豪が縦横無尽に駆け回り敵を倒していく。
今まではひとり剣心が中心となり、敵を蹴散らしていくという無双状態でしたが、今回は二人。
カメラは剣心を追っていったかと思えば、すぐに宗次郎へ、そして再び剣心へ、目まぐるしく動きます。
そのためアクションが非常に立体的で、そのため密度が出ていたように感じました。
そして最後の剣心と縁の戦い。
剣心演じる佐藤健さんのアクションは今までの作品からも折り紙付。
そして新田真剣佑さんも父親からの遺伝からかアクションの才能が高い。
そのためこの1対1の戦いも見応えがありました。
すごいもの見たという感じはありますが、全部これらを追いきれていないので、もう一度見てみたい気になりますね。
なんかアクションの話ばかりを書いてしまいました。
本作は原作のキャラクターの再現度が高いですが、今回の敵役雪代縁もイメージ通りです。
原作よりもさらに逞しくなっている感じがし、最後の敵役として存在感がありました。
原作のこのパートはかなり現実離れしている感じもありましたが、うまく映画の世界観に咀嚼してコントロールできていると思います。
この辺りは大友監督は上手ですね。
The Finalに続いてThe Biginningも公開予定でしたが、どうなるんでしょうね・・・。

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2021年4月19日 (月)

「ノマドランド」 自分の生き方を自分で決める

この作品をみようと思った理由は二つあります。
一つ目は監督がMCUの公開予定作「エターナルズ」の監督を務めるクロエ・ジャオであるということ。
私はこの監督については全く知らず、どんな作風の人なのかが見てみたかったのです。
もう一つは「スリー・ビルボード」の演技が素晴らしかったフランシス・マクドーマンドが主演しているということ。
彼女の演技は演技とは思えないリアリティを感じさせてくれるのですよね。
本作で描かれるノマドとは、季節ごとの仕事を求めてアメリカ中を旅する高齢労働者のことです。
例えば、クリスマスシーズンには消費が進み、物流が激増するので、アマゾンの拠点での臨時の仕事が増えるため、そこに彼らは集まってくるのです。
彼らの多くは今世紀初頭の経済危機により、車上生活を余儀なくされた者たちです。
日本で言えばなんとなくホームレスのようなイメージを持ってしまいますが、本作を見ているとそれとはまたちょっと違う存在なのだなと感じました。
マクドーマンドが演じる主人公ファーン自身は「ホームレスではなく、ハウスレス」だと言っていました。
Houseは建物としての家、Homeは人が住む場所としての家という違いがあります。
建物としての家は持っていないが、住む場所(ヴァン)は持っているというところでしょうか。
車上生活というのは狭い日本ではなかなか考えられません。
しかし、アメリカではトレーラーで暮らすというのは昔からありました。
劇中でも言われていましたが、彼らのような生き方は幌馬車でフロンティアを目指すアメリカの開拓民のようでもあります。
彼らは経済的な問題からそのような生活をすることになりましたが、それを前向きに捉えて生きている人もいます。
例えばスワンキーという人物は、自然の中で生き、自分の行きたいところに旅をするという生き方を愛しています。
彼女は結局、旅先で病気のために亡くなってしまいますが、本望であったでしょう。
デヴィッド・ストラザーンが演じるデヴィッドは、若い時に家族を顧みなかったことに負い目を感じていることで、ひとり車上生活を送っていました。
しかし、あるとき息子が彼を探し出し、自分の家で暮らすように誘います。
結果、彼は息子家族と一緒に暮らすようになり、再びホームを手に入れました。
本作ではスワンキーのような生き方が良い、またデヴィッドのような生き方が良いといった結論は出しません。
そこにあるのはそれぞれが自分の生き方を選択するということです。
これはとても自由でアメリカ的であると思いました。
それではファーンはどうだったのでしょうか。
彼女は愛する夫に先立たれ、それでもその思いを断ち切れず、ひとりで彼と過ごした街で暮らしていました。
しかし、企業城下町であるその町は不況により閉鎖され、彼女は住む家をなくしてしまいました。
彼女の車上生活は自分で選んだものではなく、そうせざるを得なかったということだったのだと思います。
終盤、彼女は「思い出に縛られすぎた」と言います。
それは夫への思いを大切にしていたため、自分の新しい人生を楽しむということができなかったということなのだと思いました。
彼女にとって車上生活はそのような思いを振り切るためのモラトリアムであったのではないでしょうか。
彼女自身も自由を感じ、魅力を感じてきているノマド生活を続けるのか、または惹かれるところもあるデヴィッドと暮らすような道を選ぶのかはわかりません。
いずれにしても、彼女は自分の生き方を自分で選んでいくのだろうと感じました。
マクドーマンドとデヴィッド・ストラザーン以外の出演者は皆、本当にこのようなノマド生活をしている人なんだということ。
なので、本作はノンフィクション的なリアルさを持っているのでしょうね。

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2021年4月18日 (日)

「21ブリッジ」 ボーズマンの遺作ではあるが、出来は平凡

昨年急逝した「ブラックパンサー」のチャドウィック・ボーズマンの最後の主演作です。
彼はこの作品の撮影中も闘病をしていたということですが、それを分かって見てみると、彼の姿も少しやつれているように見えます。
それでも劇中で逃亡犯を追いかけたりするところでは、すごい勢いで走ったりしていたので、撮影は大変だったのでないかと思いました。
とても魅力的な俳優でしたので、亡くなったのはとても残念です。
<ここからネタバレあり>
さて、作品自体の評価ですが、悪くはないが良くもないというような平凡なものであるかと思いました。
主要な登場人物としてJ・K・シモンズが演じる警察署長が出てきますが、彼が演じるといった時点で怪しさマックスです。
普通な警察署長であるわけがない。
J・K・シモンズには悪いですが・・・。
となると作品冒頭で起こった事件も裏があることは明白で、そこには警察の汚職があるというのも簡単に想像がつきます。
事件を追っている警察が組織を守るために、犯人を抹殺しようとするという展開は今までも数々の作品で見られました。
そのようなプロットを使ってはいけないというわけではありませんが、配役によってみえみえになってしまうのはいかがなものかなと。
最初から警察が怪しいことが分かってもいいという話の進め方もありますが、それにしてはその後の展開も平凡です。
ボーズマン演じる主人公は非常に中立的な存在で事件を追っていきますが、もう少し彼にドラマがあっても面白かったかもしれません。
冒頭の入り方では、そのようなドラマがあるかと思いましたが、その後は彼についてはあまり語られていませんでしたね。

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2021年4月17日 (土)

「騙し絵の牙」 編集力

現在の出版業会の状況が生々しく描かれていました。
出版不況と言われてずいぶんと経っています。
私が10数年前に雑誌広告の担当をしていた時にもすでに雑誌の発行部数は右肩下がりで、出版業界の先行きに不透明感が出てきていました。
その頃すでにアマゾンなどが進出して、本屋業界に逆風が吹いていました。
また「活字離れ」などと言われ、本を読まない人が増えているとも言われていました。
その後、欲しい情報はネットで手に入るようになってわざわざ雑誌を買わなくなったり、サブスクリプションサービスなどが出てきたりと、まさに出版業界は嵐の真っ只中です。
個人的には、本はデジタルよりは紙が好きで、読みたい本は必ず紙を買います。
また雑誌も好きなので結構買う方だと思うのですが、現在雑誌はどれも部数が減るばかりで苦労しているようです。
それでは雑誌というものが、全てネットの情報サイトのようなものに置き換わるかというとそうでもないかなと思っています。
個人の趣味を抜きに考えると、紙の雑誌がそのまま残り続けるかというとかなり厳しいと言わざるをえません。
では全くなくなってしまうかというと、そうではないと思います。
雑誌の価値は、そこに載っている情報そのものだけでなく、その情報をどのように編集してわかりやすい形で提供するかという「編集力」にあると考えているからです。
ネットには生の情報がたくさんありますが、あまりに情報がありすぎて、どれが自分にとって価値があるかを判断するのが難しい。
しかし、雑誌では編集者が情報をわかりやすく整理してくれているのですね。
ですので自分の感覚に合う雑誌があると、そこに載っている情報は自分にとって価値がある確率が高いわけです。
雑誌の価値は載っていう情報そのものよりは「編集力」にあると言っていいでしょう。
コンテンツ力と言っても良いかもしれません。
本作の劇中で「トリニティ」という雑誌の編集会議の場面があります。
編集者が色々なアイデアを出しているのですが、無難な提案を主人公である編集長速水がバッタバッタと却下していきます。
いつも通りの情報の提示では新しさがない。
その雑誌ならではの新鮮な切り口を提供する。
それが雑誌の持つ本当の力「編集力」だからです。
この「編集力」、情報を整理し理解しやすいように提示するということですが、別の言い方をすると編集側のストーリーに誘導しているとも言えます。
同じような事実からででも書き手によって全く違うように受け取れるようになる、これは発進する側のストーリーラインが異なるからです。
主人公速水は一級の編集者であり、だからこそ彼が描くストーリーラインに人を巻き込み、そのように行動させてしまうという手管を持っているとも言えます。
本作に登場する人物たちは表面に見えている顔と、その裏にある本当の自分の狙いの両方を持っている人たちが多い。
彼ら表も裏も速水に読まれて、いいように操られていく。
これは見ていても爽快なところです。
しかし、その速水すらも最後には出し抜かれてしまう。
ここもまた爽快です。
編集者の仕事の本質をしっかり描きながら、それを題材にして二転三転のミステリーに仕立てているこの作品、見応えありました。
原作者は「罪の声」の塩田武士さん。
「罪の声」の映画も面白かったので、この作家に興味が出てきました。
今度読んでみようかな。
紙の本で。

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2021年4月 5日 (月)

「モンスターハンター」 ゲームとは異なり個性を発揮できず

言わずと知れたカプコンのゲーム「モンスターハンター」をベースにした作品。
とはいいながら、私自身はこのゲームをほとんどやっていません。
本作は「バイオハザード」シリーズでも知られるポール・W・S・アンダーソン監督と主演のミラ・ジョヴォヴィッチという実績のあるコンビでの映画化です。
「バイオハザード」も原作のゲームとはかなり離れていたので、本作もそんな感じなのでしょうか。
私は「バイオハザード」は結構好きでしたけれども。
さて評価ですが、ストーリー的にも映像的にもそれほど新鮮さは感じられなかったですね。
ゲームの方は一人称視点での没入感がポイントであったかと思いますが、映画に関しては客観視点での描かれ方になっています。
この点については「バイオハザード」も同じなのですが、あちらはアリスというゲームにはいない主人公が当初より自分自身が何者であるかがわからず、それを探っていくことが映画の骨子となっていました。
そのため見ている側も一緒に自分探しをしているようになり、主人公へ感情移入しやすかったのではなかったかと思います。
そういう意味では、映画として客観視点で描かれていながらも、かなり主人公視点での没入感はあったように感じました。
それに対し、本作はあくまで出来事は客観的な視点で描かれているため、ゲームにあるような没入感はあまりありません。
描かれるのはドラゴンなどのモンスターとの戦いであり、これはここ10数年さまざまな映画でCGで描かれているものであり、新味は感じません。
結果、「バイオハザード」シリーズで見せたようなゲームとは異なる映画としての新しい見せ方にはなっておらず、見応えとしては物足りないところがありました。
あと、トニー・ジャーが出演することも期待していたところではありましたが、彼らしいアクションもそれほどあるわけではなく、この点でも物足りなさを感じました。

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「映画 ヒーリングっど♥プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!」 自分の夢、人の夢

娘がハマっている「プリキュア」シリーズの最新の映画です。
2月まで放映されていた「ヒーリングっど♥プリキュア 」と過去作「Yes!プリキュアGoGo!」のコラボ作品となります。
うちの娘にとっては、私が子供の頃の「ウルトラマン」や「仮面ライダー」のような存在なのですね。
すごく真剣に見ているし、現在オンエア作品だけでなく、過去作にも遡って見ているので、大抵のプリキュアについて説明できます。
私も過去作の「ウルトラマン」や「仮面ライダー」の怪獣・怪人まで暗記していたものなあ・・・。
娘に付き合って「プリキュア」を見ているので、私自身の知識も日々レベルアップ中です。
このシリーズ見ていると感心するのは、本当にちゃんと考え得られて作られているということ。
この辺は最近の「仮面ライダー」シリーズもそうなのですが、大人が見ていても結構メッセージが伝わってくるのですよね。
本作のメインとなるヒーリングっど♥プリキュア 」はビョーゲンズという病原菌から地球を守り癒すプリキュアですが、意図せずコロナ禍でフィクションとリアルがリンクしてしまうという状況になりました。
その中で子供たちへ真摯なメッセージを伝えていたと思います。
映画のテーマは夢・想い。
誰でも将来の夢を持っていたり、誰かのことを大切に想ったりしますよね。
ただそれは簡単には実現できなかったりするもので、諦めずにどれだけ強く想い続けられるか、が大事だったりします。
しかし、強く想い続けることによって、他の誰かの夢を犠牲にしても良いのかという問題も起こります。
今回のプリキュアが対峙する事件の首謀者はただの悪ではなく、事件はその人にとって本当に大事な人への想いがあることによって引き起こされます。
ですので、ただの悪とはいえません。
悪役めいた怪物エゴエゴも登場しますが、彼とて生みの親に認められたいという想いから暴走してしまうわけです。
自分の想いを諦めずに大切にすることは大事。
でも他の人の想いも大切にすることも大事。
どっちがより大切かというのはなかなか難しいことですが、それについてちゃんと考えようというのが、子供たちへのメッセージになるのだと思います。
「プリキュア」にせよ「仮面ライダー」にせよ、子供向けのコンテンツはそれだけで見向きもしない方もいますが、実は結構ちゃんと考えて作られているのですよね。
下手なバラエティ見せるよりは子供たちにとって有意義な感じがしています。
本作には最新作の「トロピカルージュ!プリキュア」のショートムービーも同時上映されます。
この作品は割とはっちゃけて元気一杯のテイストで、こういう色々なことで制約がある世の中で、力を与えてくれる作品になっていく作品になるような気がします。
ショートムービーはすごく短いのですが、キャラクターが縦横無尽に動き回りとても楽しく見れました。

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2021年3月20日 (土)

「すばらしき世界」 すばらしき世界とは?

西川美和監督の作品は人間や社会を深く抉るところがあるので、見る側としても、それなりに覚悟が要ります。
ですので、自分なりに調子がいい時に行こうと思っていたら、公開している劇場が絞られ始めてきていたので、慌てて見に行ってきました。
やはり本作も考えさせられる作品でした。
今年に入って見た「ヤクザと家族」でも描かれていましたが、昨今反社会的勢力という存在はなかなか生きにくい時代です。
もちろん一般庶民としては、そのような方々とは関わりたくないというのが本音です。
しかし、映画という世界の中ではヤクザはある種のファンタジーとして存在していました。
昭和の時代には東映のヤクザ映画が全盛でしたが、そこで描かれているのはファンタジーとしてのヤクザであったのかもしれません。
すなわち世間のしがらみや法律などには縛られない存在であり、義理や人情など損得勘定とは違った価値観で動いている人々。
戦後民主主義が押し進められ、そして一億総中流と言われた時代に、社会や会社に縛られない存在はある種の憧れであったのかもしれません。
しかし、今現在彼らは反社会勢力として徹底的に社会から排除されています。
もちろん犯罪を犯してしまってはいけませんが、その後の更生も非常に難しいものがあることが本作では描かれています。
以前はある種の憧れが反映されていると書きましたが、今は汚れたものを見るような目線であり、そういう点において以前とは逆の方向で社会から隔絶しているのですね。
社会の中では全ての人がそこにきちんと収まるということはなく、幾人かはドロップアウトしてしまいます。
人や社会から必要ではないというように感じてしまう。
本作の主人公の三上もそのような男でした。
彼の受け皿となったのがヤクザでした。
彼は数々の犯罪に手を染めましたが、少なくとも必要とされていると感じていました。
自分の居場所があったのです。
しかし、この現代10数年ぶりに社会に帰還した彼は自分の居場所を見つけられません。
どこに行っても元反社であるというレッテルはついて回りますし、また彼の性向としてもすぐにカッとしてしまう癖は無くなっていません。
それでも社会に馴染もうと思いますが、数々の問題が起こり、その度に彼は憤りを感じます。
幼い頃、彼は母親に捨てられました。
彼自身は捨てられたとは思わないようにしているのですが、母親に必要にされなかったという思いがあります。
やはり、社会に戻っても自分は必要とされていないという気持ちになったでしょう。
しかし、彼のことを思う人は決していない訳ではなく、身元引受人となってくれた弁護士夫妻、彼を取材しているディレクター、行きつけのスーパーの店主、役所の担当者などの支えがあり、ようやく居場所を見つけていきます。
やはり、人は誰かを必要とし、必要とされる関係性が確立できることにより、自分が生きていいという実感を得られる存在なのでしょう。
三上が最後亡くなってしまいますが、その時は彼は人生の中でも最も人に必要とされた時であったのだと思います。
決して悪くない人生であったと思って亡くなったのだと思いたい。
そこにタイトルの「すばらしき世界」という文字が入り、彼の思いを表しているような気がしました。
 
とはいえ、西川作品なので、そういう表層的な捉え方だけではないかとも思いました。
三上の就職祝いの席で弁護士夫妻は、彼の悪いことは許せないという正義感は認めつつも、社会に馴染むにはある種我慢したり受け流したりすることも必要だと諭されます。
その後、彼は職場でのいじめや陰口などを目にしますが、彼は恩人のアドバイスを大事にして、受け流します。
その時の三上の彼らしくない表情や苦しみは、これが本当に生きているということなのかという疑問を持たせるものでもありました。
弱きを助けてはいけないのか。
見て見ぬふりをするのが良いことなのか。
そういう社会が「すばらしき世界」なのかと。
そういう意味でこのタイトルはダブルミーニングとなっており、相変わらず西川作品は深いなと感じました。
 
今まであまり注目はしていなかったのですが、仲野太賀さんはいいですね。
次第に三上に共感を持っていく様子、そして彼の死に直面し、取り乱し呆然とする様。
演技ではありますが、彼が演じる津乃田の気持ちがありありと伝わってきました。
これからも要チェックの役者さんです。

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「ブレイブ -群青戦記-」 高校生の「戦国自衛隊」

突然、高校生アスリートたちが高校ごと雷と共に霧に包まれる。
彼らは突如戦国時代にタイムスリップしてしまったのだ。
混乱する彼らに戦国武者たちが襲いかかる・・・。
私の世代的には戦国時代にタイムスリップと言えば、「戦国自衛隊」です。
これは今でも名作だと思っています。
近代兵器で武装した自衛隊員が、戦国時代にタイムスリップするというプロットが当時すごく斬新でした。
武器を持っていながらも戦うことを禁じられている自衛隊員が、戦国時代で生きていく中で、次第にこの時代こそが自分たちが生きるべき時代であると感じていきます。
戦国時代が荒々しい時代であり、決してロマンチックな場所ではなく、ある種の野生が求められるということもこちらの作品では描いていました。
 
というように「戦国自衛隊」には思い入れがあったので、同様のプロットである本作については、見る前は懐疑的でした(原作は読んでいませんでした)。
トップアスリートとは言え高校生ですし、ロマンチックな戦国時代が描かれても、甘っちょろくて嫌だなと思っていたのです。
しかしその懐疑も冒頭で払拭されました。
野武士たちがいきなり高校生たちに襲いかかります。
彼らはまさに獣で、容赦がありません。
これにより彼らが送り込まれていった時代は、現代とは全く違う野生の時代であることがわかります。
仲間を救うため、彼らは織田信長の陣を攻めますが、次々に仲間たちは殺されていってしまいます。
その辺も全く容赦はありません。
主人公である蒼は懸命に生きるということの意味を見出せていない少年でした。
周りは部活に精を出し、自分を高めようとすることに意義を感じられていましたが、蒼はそこに価値を見つけられません。
悶々としていた彼でしたが、戦国時代にタイプスリップしてしまった後に、次第に自分の中にある強い思いに気づき始めます。
「戦国自衛隊」の伊庭は自分の中の野性に気付きましたが、蒼の場合は自分の中にある人を救いたいという強い思いとリーダーシップに気づくのですね。
そういう点では、本作は少年が大人になっていく成長物語という側面も持っていると思います。
終盤に彼に影響を与えた人物の死を目の当たりにして、蒼はそしてついに自分の役割をはっきりと認識します。
そういえば映画版は違いましたが、原作の「戦国自衛隊」では主人公の伊庭は織田信長的な役割を担う存在となっていました。
 
主演の新田真剣佑はさすがアクションは見事で立ち回りも絵になりました。
本作においての敵役となるのは渡邉圭祐さんですが、彼も見事な悪役っぷり。
「ジオウ」でもいい味を出していましたが、天性の演技巧者だと思います。
立ち回りも上手でした。
 
「戦国自衛隊」のことを取り上げましたが、こちらの主演は千葉真一さん。
そして本作「ブレイブ」の主演は新田真剣佑さんで、千葉真一さんの実の息子です。
親子で同じような役を演じるのは運命的ですね!

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「映画しまじろう しまじろうと そらとぶふね」 1年越しでようやく公開

子供と一緒に行ってきました。
最近は映画につれて行っても、ちゃんと座って見れるようになりました。
「しまじろう」の映画は通常春の時期に公開されますが、昨年はまさにコロナの拡大時期と重なり、延期になりました。
およそ1年余り経ったところで、ようやくの公開となりました。
今までは2Dであったり、着ぐるみの実写であったりがごっちゃになっていた形式でしたが、今回の「しまじろう」の映画は初の全編3Dでの作品となっています。
コロナ禍の中での公開ということで、感染対策についても考えられています。
今までは鑑賞の前に配られるメガホン状の入場者プレゼントを使い、子供たちが「しまじろう、がんばれ!」と大きな声をかけるというのが恒例でしたが、こちらは今回は見送り。
その代わり、拍手で応援となっていました。
入場した子供たちもその辺りはちゃんとわかっていて、しまじろうたちが言う通り拍手で応援していましたよ。
ストーリーとしては、大人から見ればたわいもないお話ではありますが、子供としては素直に楽しんでいたようでした。
確実に映画好きになってくれているので、大きくなってもいろんな映画を一緒に見に行ってくれるといいなと思っています。
今週末はおそらく新作の「プリキュア」の映画を一緒に観にいくことになりそうです。

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2021年3月17日 (水)

「太陽は動かない」 アクションサスペンスとしてしっかりできている、が・・・

藤原竜也さん、竹内涼真さんというホリプロの二枚看板によるアクションサスペンス。
二人が演じる産業スパイが所属するのは、AN通信という謎の組織で、彼らは心臓にチップを埋め込まれており、24時間毎の定時連絡が途切れるとそれが爆発してしまうのだ。
ある技術を巡り、彼らと別の産業スパイ、そして中国の企業が互いに騙し合い、裏をかき、戦いながら秘密情報を奪取しようとする。
彼らは香港、ロシア、ブルガリアなど世界各国を股にかけ、情報を奪い合う。
海外ロケをしっかりと行ったことによる映像のグローバル感、チップに埋め込まれた爆弾というタイムリミットサスペンスの要素、敵味方が目まぐるしく変わるストーリー、主人公鷹野の過去のエピソードなどスパイ映画として盛り上げる要素はしっかりと埋め込まれています。
メガホンを取るのは「海猿」「MOZU」など数々のアクション映画を撮っている羽住英一郎監督です。
一流の俳優・スタッフ、その他の物語の要素としてもアクションサスペンスとしてしっかりと作られており、本作は面白くない訳ではありません。
劇場で一度見ていて、つまらないとは思いませんでした。
ただ記憶に残っていく作品かというと、そうとはなかなか言えません。
邦画としては頑張っている、という印象でしょうか。
10数年前だったらもっと満足できたのかもしれません。
世界のアクションサスペンスのレベルはもっと上の方に行ってしまっている気がします。
公開が延期されていますが長年シリーズとして続いている「007」は、新たなボンド像を築き、時代に合わせたアップデートに成功しています。
「M:I」はアクションシーンに貪欲に今まで見たことがないものを目指しています。
「TENET」はアクションサスペンスを超えた衝撃を与えました。
こういう進化を観客である我々は目にしているで、確実に舌が肥えてきてしまっているのだと思います。
本作は決して面白くない訳ではなく、脚本なりアクションシーンなりは非常に頑張っていて見ていて面白くない訳ではありません。
しかし、新しい驚きがあったかというとそういうことはありません。
スパイアクションサスペンスのとして構築はされているとは思いますが、そこの枠組みから超えてはいないように思うのです。
その点がなかなか満たされない印象に繋がってしまったのかもしれません。
なかなか邦画では難しいのですけれどね・・・。
こちらの作品はWOWOWの方でも前日譚が放送されたとか(見てはいませんが)。
もしかするとそういう連続シリーズの方が向いているかもしれません。

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